遺伝子変異による血清カルシウム濃度上昇が、冠動脈疾患/心筋梗塞のリスク増加と関連していることが明らかとなった。ただし、冠動脈疾患と生涯にわたる遺伝子曝露による血清カルシウム濃度上昇との関連が、カルシウム補助食品(サプリメント)による短期~中期的なカルシウム補給との関連にもつながるかどうかは不明である。スウェーデン・カロリンスカ研究所のSusanna C. Larsson氏らが、血清カルシウム濃度上昇に関連する遺伝子変異と、冠動脈疾患/心筋梗塞のリスクとの間の潜在的な因果関係をメンデルランダム化解析により検証し、報告した。先行の観察研究において、血清カルシウムは心血管疾患と関連していることが認められており、無作為化試験でも血清カルシウム濃度を上昇させるサプリメントが心血管イベント、とくに心筋梗塞のリスクを増加させる可能性が示唆されていた。JAMA誌2017年7月25日号掲載の報告。
GWASでカルシウム濃度関連SNPを特定し、冠動脈疾患との関連を解析
研究グループは、血清カルシウム濃度に関するゲノムワイド関連解析(GWAS)のメタ解析(最大6万1,079例)および、1948年より世界中の人口集団から収集された基準となる時点のデータがある冠動脈疾患/心筋梗塞患者と非患者(対照)を含む冠動脈疾患国際コンソーシアム(CARDIoGRAMplusC4D)の1,000ゲノムに基づくGWASメタ解析(最大18万4,305例)から特定された一塩基遺伝子多型(SNP)に関する要約統計量を用いて解析を行った。
各SNPと冠動脈疾患/心筋梗塞との関連は血清カルシウムとの関連によって重み付けをし、逆分散法により重み付けしたメタ解析を用いて推定値を統合した。遺伝的リスクスコアは、血清カルシウム濃度上昇と関連する遺伝子変異に基づいた。
主要評価項目は、冠動脈疾患および心筋梗塞のオッズ比であった。
血清カルシウム濃度上昇に関連する6つのSNPが冠動脈疾患のリスク増加に関与
メンデルランダム化解析の対象となった18万4,305例(冠動脈疾患患者6万801例[心筋梗塞が約70%]、対照12万3,504例)において、潜在的交絡因子との多面的関連がなく血清カルシウム濃度と関連する6つのSNPが特定された。それらが、血清カルシウム濃度に関する遺伝子変異の約0.8%を占めていた。
逆分散法によるメタ解析(前述の6つのSNPの統合)の結果、遺伝的に予測される血清カルシウム濃度の0.5mg/dL上昇(約1SD)につき、冠動脈疾患のリスクは1.25倍(95%信頼区間[CI]:1.08~1.45、p=0.003)、心筋梗塞は1.24倍(95%CI:1.05~1.46、p=0.009)となることが示された。
(医学ライター 吉尾 幸恵)