広範なPCI施行例で、生体吸収性と非生体吸収性ステントを比較/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2017/09/13

 

 待機的か緊急を問わずPCI施行患者を対象とした試験で、新たな技術が用いられている超薄型ストラット生体吸収性ポリマー・シロリムス溶出ステント(Orsiro)は、非生体吸収性ポリマー・エベロリムス溶出ステント(Xience)と比較して、臨床的アウトカムに関する非劣性が100%見込まれることが発表された。米国・Piedmont Heart InstituteのDavid E. Kandzari氏らによる13ヵ国90の病院で行われた無作為化試験「BIOFLOW V試験」の結果で、著者は「今回の試験結果は、次世代薬剤溶出ステント技術の改善に新たな方向性を示すものであった」と述べている。

 これまでに冠動脈薬剤溶出ステントは、新たなメタル合金を含むもの、ステント構造を変化したもの、そして生体吸収性ポリマーを含むものが開発されてきた。研究グループは、これらの臨床的安全性および有効性改善の向上について先行の無作為化試験では示されていないとして、広範なPCI施行患者集団で、生体吸収性ポリマー・シロリムス溶出ステントと非生体吸収性ポリマー・エベロリムス溶出ステントの臨床的アウトカムを比較する検討を行った。Lancet誌オンライン版2017年8月26日号掲載の報告。

13ヵ国90の病院で待機的または緊急PCI施行患者を対象に無作為化試験
 BIOFLOW V試験は、13ヵ国(オーストラリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、ドイツ、ハンガリー、イスラエル、オランダ、ニュージーランド、韓国、スペイン、スイス、米国)にある90の病院で、待機的または緊急にPCIを受ける患者を登録して行われた。適格とされたのは、18歳以上の新規未治療の冠動脈病変にステント留置予定である虚血性心疾患の患者で、超薄型(60μm)生体吸収性ポリマー・シロリムス溶出ステントまたは非生体吸収性ポリマー・エベロリムス溶出ステントを用いる群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要エンドポイントは、12ヵ月時点の標的病変不全の発生であった。また、ベイズ法を用いて、両ステントの2つの無作為化試験のデータと複合し非劣性に関する比較を行った。解析は、intention to treatにて行った。

12ヵ月時点の標的病変不全の発生率は6% vs.10%
 2015年5月8日~2016年3月31日に、4,772例の患者が本研究に登録された。1,334例が包含基準を満たし、無作為に割り付けられた(生体吸収性ステント群884例、非生体吸収性ステント群450例)。

 生体吸収性ステント群は52/883例(6%)、非生体吸収性ステント群では41/427例(10%)で、12ヵ月時点の評価による標的病変不全の発生が認められた(95%信頼区間[CI]:-6.84~-0.29、p=0.0399)。標的血管心筋梗塞の発生に関しても、有意な差が認められた(39/831例[5%] vs.35/424例[8%]、p=0.0155)。

 生体吸収性ステントの非生体吸収性ステントに対する非劣性は、100%と見込まれた。ベイズ分析(2,208例)で、標的病変不全の発生頻度の差は-2.6%(95%確信区間[credible interval]:-5.5~0.1)であった(非劣性マージンは3.85%)。

(ケアネット)

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コメンテーター : 中川 義久( なかがわ よしひさ ) 氏

滋賀医科大学 循環器内科 教授

J-CLEAR評議員