閉経後女性に対するホルモン補充療法の、長期死亡への影響は認められないことが報告された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJoAnn E. Manson氏らが、1990年代に行われた2つの閉経後ホルモン補充療法に関する無作為化試験(Women's Health Initiative Estrogen Plus Progestin and Estrogen-Alone Trials)の参加者を18年間追跡した結果で、全死因死亡、心血管疾患死、がん死いずれにおいても関連性は認められなかった。これまでに同試験から健康アウトカムの解析は報告されているが、概して全死因および疾患特異的死亡に注視した論文はなかったという。JAMA誌2017年9月12日号掲載の報告。
CEE+MPA vs.プラセボ、CEE単独 vs.プラセボを解析
研究グループは、ホルモン補充療法試験の介入中および介入後の長期フォローアップ中における、全死亡および原因別死亡の累積発生率を調べた。
1993~1998年に、米国居住の民族的に多様な50~79歳の閉経後女性2万7,347例が2つの無作為化試験に登録され、2014年12月31日まで観察フォローアップを受けた。被験者は、結合型エストロゲン製剤(CEE)0.625mg/日+酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)2.5mg/日 vs.プラセボを受ける介入を、またはCEE単独 vs.プラセボを受ける介入を受けた。前者のCEE+MPA vs.プラセボ試験(8,506例 vs.8,102例)の介入期間は中央値5.6年、後者のCEE単独 vs.プラセボ試験(5,310例 vs.5,429例)は同7.2年であった。
研究グループは、2つの試験のプールデータおよび各試験データにおける、全死因死亡(主要アウトカム)、原因別死亡(心血管疾患死、がん死、その他主要な死因によるもの)を調べ、事前に規定した、無作為時の年齢をベースにした10歳階級群別で解析を行った。
介入中および18年累積の全死因および原因別死亡ともプラセボ群と有意差なし
無作為化を受けた2万7,347例のベースライン時の平均年齢(SD)は63.4歳(7.2)、白人80.6%であった。死亡に関するフォローアップデータは、98%超で入手できた。
累積18年のフォローアップ中における死亡は7,489例であった(介入試験中1,088例、介入後フォローアップ中6,401例)。
全プールコホートの解析で、全死因死亡率はホルモン補充療法群27.1%、プラセボ群27.6%であった(ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.94~1.03)。CEE+MPAのプラセボに対するHRは1.02(95%CI:0.96~1.08)、CEE単独の同HRは0.94 (同:0.88~1.01)であった。
心血管疾患死のプール解析では、ホルモン補充療法群(8.9%) vs.プラセボ群(9.0%)のHRは1.00(95%CI:0.92~1.08)、また全がん死のプール解析では、ホルモン補充療法群(8.2%) vs.プラセボ群(8.0%)のHRは1.03(95%CI:0.95~1.12)、その他の主要な死因による死亡のプール解析では、ホルモン補充療法群(10.0%) vs.プラセボ群(10.7%)のHRは0.95(95%CI:0.88~1.02)であった。
全プールコホートにおいて、10歳階級群別の分析に基づき若い年齢(50~59歳)群と高齢(70~79歳)群を比較した結果、全死因死亡の名目HR比は、介入期間中が0.61(95%CI:0.43~0.87)、累積18年のフォローアップ中は0.87(95%CI:0.76~1.00)であった(試験間の有意な不均一性なし)。
(ケアネット)