主に腹部手術を受ける術後合併症リスクが高い成人患者において、個別的な収縮期血圧目標値の下で行う血圧管理戦略は、標準血圧管理と比べて術後臓器障害リスクを低下することが示された。フランス・クレルモン・フェラン大学病院のEmmanuel Futier氏らが、多施設共同無作為化試験の結果を報告した。周術期における低血圧症は、術後罹患や死亡の増大と関連する。しかし適切な血圧管理戦略は明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2017年9月27日号掲載の報告。
術後7日目までの全身性炎症反応症候群と1つ以上の臓器障害の複合発生を比較
研究グループは、個々の患者に合わせた個別的な血圧管理戦略が、術後臓器障害を減じるかを調べるため、フランスの大学および非大学病院9施設で、Intraoperative Norepinephrine to Control Arterial Pressure(INPRESS)試験を行った。
被験者は、術前急性腎障害(AKI)リスク指標がclass III以上(術後腎障害のリスクが中等度~重度を示す)で、全身麻酔下にて2時間以上を要する大手術を受ける成人患者298例であった。無作為に、個別的血圧管理戦略群と標準血圧管理群に割り付け、前者では、収縮期血圧(SBP)の参照値(例:患者の安静時SBP)±10%以内を目標にノルアドレナリン持続注入によって血圧を管理した。後者では、SBPが80mmHg未満に低下もしくは術中および術後4時間の参照値の40%未満値に低下した場合に、エフェドリンを静脈内ボーラス投与する処置で血圧を管理した。
被験者の登録期間は2012年12月4日~2016年8月28日、最終フォローアップは2016年9月28日。
主要アウトカムは、術後7日目までの全身性炎症反応症候群と1つ以上の臓器障害(腎臓系、呼吸器系、心血管系、中枢神経系、凝固系)の複合であった。副次アウトカムは、術後30日時点の主要アウトカムの各項目の発生、ICU在室期間、入院期間、有害事象、全死因死亡などであった。
個別的血圧管理群の主要アウトカムの発生HRは0.73
無作為化を受けた298例のうち、292例(年齢70±7歳、女性44例[15.1%])が試験を完了し、修正intention-to-treat解析に包含された(個別的血圧管理戦略群147例、標準血圧管理群145例)。
主要アウトカムの発生は、個別的血圧管理戦略群56/147例(38.1%)に対し、標準血圧管理群は75/145例(51.7%)であった(相対リスク:0.73、95%信頼区間[CI]:0.56~0.94、p=0.02、絶対リスク差:-14%、95%CI:-25%~-2%)。
30日間の術後臓器障害発生は、個別的血圧管理戦略群68例(46.3%)、標準血圧管理群は92例(63.4%)であった(補正後ハザード比:0.66、95%CI:0.52~0.84、p=0.001)。一方、重篤な有害事象や30日死亡率について、群間で有意な差は認められなかった。
(ケアネット)