英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのRoope Mannikko氏らは、機能破壊的なSCN4A変異が、乳幼児突然死症候群(SIDS)で死亡した乳幼児に多く認められるとの仮説を検証した症例対照研究の結果を報告した。SIDSは、高所得国における生後4週以降の乳幼児死亡の主な原因で、呼吸中枢の障害が一因と思われる。呼吸筋の収縮を引き起こす刺激は、SCN4A遺伝子にコードされているナトリウム(Na)チャネルNaV1.4によってコントロールされており、骨格筋の興奮性を直接変えるNaV1.4の変異は、筋強直、周期性四肢麻痺、先天性ミオパチー、筋無力症候群を引き起こす可能性が示唆されていた。SCN4A変異は、致死性無呼吸や喉頭痙攣の乳幼児でも確認されていた。Lancet誌オンライン版2018年3月28日号掲載の報告。
SIDS症例約300例と対照約700例でSCN4A遺伝子変異の頻度を比較
研究グループは、2つの連続コホートを含む欧州系のSIDS症例278例、ならびに民族をマッチさせた心血管・呼吸器・神経疾患の既往がない対照成人729例について、両群における
SCN4Aのまれな変異(Exome Aggregation Consortiumのマイナー対立遺伝子頻度<0.00005)の頻度を比較するとともに、異種発現系を用いて変異チャネルの生物物理学的な特徴を評価した。
SIDS症例の1.4%にSCN4A遺伝子変異を認めた
SIDSコホートの乳幼児278例中4例(1.4%)が機能破壊的な
SCN4A遺伝子変異を有していたが、民族をマッチさせた対照729例では認められなかった(p=0.0057)。
この結果を受けて著者は、「NaチャネルNaV1.4の機能異常をもたらすまれな
SCN4A遺伝子変異が、SIDSで死亡した乳幼児で認められた」としたうえで、「
SCN4A遺伝子変異は、筋膜興奮性を有意に変化させ、呼吸および喉頭機能を障害する可能性がある。乳幼児突然死のサブセット集団において、筋肉Naチャネルの機能障害は修正可能な危険因子であることが示唆された」と述べている。
なお著者は研究の限界として、欧州の白人のみに限定して
SCN4A変異が評価されたこと、利用可能なデータが少なく、他の家族メンバーは検証できていないことなどを挙げ、今後の課題として、「類似する集団や他の民族集団で再検証すべきである」とも述べている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)