メガファーマスポンサーの臨床試験は結果公表率が高い?/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2018/06/15

 

 臨床試験のデザインと結果の公表は、疾患領域だけではなく資金提供組織のタイプや規模によっても大きく異なるという。英国・ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのMagdalena Zwierzyna氏らが、資金提供組織と専門領域別に臨床試験の実施状況、デザインの特性および公表(dissemination)について調査した記述分析の結果を報告した。登録された臨床試験であっても、試験デザインが最適でなかったり、結果の公開が遅れることはよくあり、全試験のほぼ半数が試験完遂後何年も公表されないままである。現在、さまざまな組織が臨床試験に資金提供を行っており、報告される割合やその他の研究の質は、資金提供組織のタイプによって異なる可能性が指摘されていた。BMJ誌2018年6月6日号掲載の報告。

Clinicaltrials.govに登録された臨床試験計4万5,000件を検証
 研究グループは、Clinicaltrials.govにおける試験のプロトコール情報、PubMedにおける試験結果に関する学術論文のメタデータ、Scimago Journal & Country Rankのデータベースにおける関連学術誌の品質測定法を用い、2006年1月以降2015年7月以前に完了した全臨床試験相にわたる無作為化試験および非無作為化試験で、分子標的治療、生物学的製剤、アジュバントおよびワクチンを評価した計4万5,620件について記述的分析を行った。

大企業やNIHから資金提供を受けた臨床試験、結果の公表率は約6~7割
 企業は非営利組織に比べ大規模な国際共同無作為化試験に資金提供しているようであったが、時間とともに資金提供する試験方法に差はみられなくなった。試験を完遂した有効性評価試験(第II~IV相試験)2万7,835件のうち、結果が公表されていたのは1万5,084件(54.2%)であった。

 企業は非営利組織よりも試験結果を公表する可能性が高く(59.3%[1万444/1万7,627件]vs.45.3%[4,555/1万66件])、大規模製薬会社は小規模の製薬会社よりも公表率が高かった(66.7%[7,681/1万1,508件]vs.45.2%[2,763/6,119件])。また、米国国立衛生研究所(NIH)から資金提供を受けた試験は、他の非営利組織から資金提供を受けた試験よりも公表率が高かった(60.0%[1,451/2,417件]vs.40.6%[3,104/7,649件])。

 大規模製薬会社ならびにNIHから資金提供を受けた試験の結果は、非営利組織から資金提供を受けた試験と比較して、Clinicaltrials.govに掲載されていることが多く、主に学術論文として公表されていた。無作為化試験は非無作為化試験に比べ学術雑誌で公表される可能性が高く(34.9%[6,985/19,711件])vs.18.2%[1,408/7,748件])、学術雑誌で発表される割合は腫瘍学で20%、自己免疫疾患では42%と、疾患領域によって差異があった。

 なお著者は、Clinicaltrials.govに登録された臨床試験に限定していること、登録ミスや不適切な登録・不明確な用語といったデータの質に関する要因がある可能性を、研究の限界として挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 折笠 秀樹( おりがさ ひでき ) 氏

統計数理研究所 大学統計教員育成センター 特任教授

滋賀大学 データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター 特任教授

J-CLEAR評議員