結腸直腸腫瘍と冠動脈疾患(CAD)は類似した危険因子を共有しており、発症の関連性も疑われている。そこでCADを有する患者の横断研究を行い、結腸直腸腫瘍の出現率を調査するとともに、2つの疾患の共通危険因子を同定する研究が、香港大学のAnnie On On Chan氏らによって行われた。JAMA誌9月26日号より。
狭窄率50%以上と結腸直腸腫瘍との関連を調査
2004年11月から2006年6月にかけて、CADを疑われ冠動脈造影を受けた香港(中国)の患者の中から、結腸内視鏡検査によるスクリーニングを実施する対象を選び、冠動脈の内1つでも50%以上狭窄している例をCADと定義し(n=206)、それ以外はCAD陰性とみなした(n=208)。対照群(n=207)は、年齢・性別対応で一般の集団から集められた。すでにアスピリンまたはスタチンを服用している患者、結腸疾患の既往がある患者、過去10年間に結腸内視鏡検査を受けた患者は除外されている。
主要評価項目は、CAD陽性群、CAD陰性群、一般群それぞれにおける結腸直腸腫瘍の出現率。結腸直腸腫瘍とCADとの関連、そして2つの疾患に共通する危険因子を同定するため、年齢・性調整の上で二変量ロジスティック回帰分析を行った。
結腸直腸腫瘍の出現率はCAD陽性群で34%
結腸直腸腫瘍の出現率はそれぞれCAD陽性群34.0%、CAD陰性群18.8%、一般群20.8%だった(χ二乗検定によるP<0.001)、進展病巣の出現率は18.4%、8.7%、5.8%(P<0.001)。また、癌の出現率は4.4%、0.5%、1.4%だった(P=0.02)。CAD陽性群の癌の内50%は早期であった。
年齢・性調整後の結腸直腸腫瘍とCADの関連オッズ比は1.88(95%信頼区間:1.25-2.70、P=0.002)。高度の病変とCADとの関連オッズ比は2.51(同1.43-4.35、P=0.001)だった。
メタボリックシンドロームのオッズ比は5.99(同1.43-27.94、P=0.02)、喫煙歴のオッズ比は4.74(同1.38-18.92、P=0.02)で、Chan氏らは「これらは進行性の結腸病変とCADにおける独立危険因子と認められる」と報告。CAD群における結腸直腸腫瘍の出現率は有意に高く、進行性結腸病変の存在とCADとの関連は、メタボリックシンドロームと喫煙歴があるほど強いことが明らかになったと結論づけた。
(朝田哲明:医療ライター)