スウェーデン・カロリンスカ研究所のAlexander Viktorin氏らによる前向きコホート研究で、受胎前後での父親の抗うつ薬使用は、生まれてくる子供の4つの主要有害アウトカム(未熟児出産、先天異常、自閉症、知的障害)に関して安全であることが示された。これまで、妊娠中の母親の抗うつ薬使用については大規模に調査が行われている。その結果、抗うつ薬治療が精子に悪影響を及ぼす可能性を示唆する研究があったが、受胎時の父親の抗うつ薬治療についてはほとんど注目されていなかった。BMJ誌2018年6月8日号掲載の報告。
受胎期に服用、妊娠期以後に服用、非服用を比較
研究グループは、回帰分析を用いた陰性対照と比較した観察的な前向きコホート研究で、受胎時期の父親の抗うつ薬使用と、生まれてくる子供の有害アウトカムとの関連を調べた。スウェーデン全国から2005年7月29日以降に妊娠、2006~07年に生まれた小児17万508例を対象とした。
同対象のうち父親が受胎期(受胎前4週~受胎後4週)に抗うつ薬治療を受けていたのは3,983例で、同治療を受けていない(非曝露)群は16万4,492例、父親が受胎期間中抗うつ薬を服用していないが妊娠期(受胎後4週~出産)に同治療を開始(陰性対照比較)群は2,033例であった。
主要評価項目は、未熟児出産、誕生時に先天異常と診断、自閉症スペクトラム障害の診断、知的障害の診断であった。
未熟児出産、先天異常、自閉症、知的障害との関連はみられず
ロジスティック回帰分析を用いた非曝露群との比較検討で、受胎時期の父親の抗うつ薬使用は、未熟児出産(補正後オッズ比:0.91、95%信頼区間[CI]:0.79~1.04)や先天異常(同:1.06、0.90~1.26)と関連性は認められなかった。また、Cox回帰分析を用いた検討で、受胎時期の父親の抗うつ薬使用は自閉症(補正後ハザード比:1.13、95%CI:0.84~1.53)や知的障害(0.82、0.51~1.31)と関連性はなかった。
妊娠期に抗うつ薬治療を開始した父親の子供についても、知的障害以外のアウトカムは類似していた。知的障害については補正後ハザード比の上昇がみられた(1.66、1.06~2.59)。
受胎期に抗うつ薬を使用した父親の子供3,983例は、妊娠期に抗うつ薬治療を開始した父親の子供2,033例と比較して、未熟児出産(1.09、0.86~1.37)、先天異常(0.98、0.70~1.20)、自閉症(0.79、0.50~1.27)について差はみられなかったが、知的障害についてはリスクの減少がみられた(0.49、0.26~0.93)。
著者は、「今回の結果は、公衆衛生業務をアシストし、患者や医師に計画的な妊娠における抗うつ薬使用の有無についての意思決定の助けとなり、受胎期の抗うつ薬服用を予定している父親の懸念を軽減することになるだろう」と述べている。一方で、今回のトピックに関する研究は限定的で、因果関係は明らかになっておらず、すべての個人や集団に普遍化できるとは限らないとしている。
(ケアネット)