英国・ノッティンガム大学のYana Vinogradova氏らは、プライマリケアにおいて、直接経口抗凝固薬(DOAC)と出血・虚血性脳卒中・静脈血栓塞栓症・全死因死亡リスクの関連を、ワルファリンと比較検証する前向きコホート研究を行い、概してアピキサバンが最も安全で大出血・頭蓋内出血・消化管出血のリスクが減少したのに対して、リバーロキサバンと低用量アピキサバンは全死因死亡リスクの上昇と関連していたことを明らかにした。これまで、無作為化比較試験でワルファリンに対するDOACの非劣性が示されていたが、実臨床での観察試験はほとんどが心房細動患者を対象としていた。BMJ誌2018年7月4日号掲載の報告。
DOAC 3剤とワルファリンの出血リスクを英国プライマリケアベースで比較
研究グループは、QResearchおよびClinical Practice Research Datalink(CPRD)の2つのデータベースから、それぞれ2011年1月〜2016年10月および3月に、英国のプライマリケアにおいてワルファリン(13万2,231例)、ダビガトラン(7,744例)、リバーロキサバン(3万7,863例)、アピキサバン(1万8,223例)を新規に処方された患者(新規処方前12ヶ月以内に抗凝固薬を処方されたことのある患者は除外)を特定し、心房細動患者と非心房細動患者に分け分析した。
主要評価項目は、入院や死亡に至った大出血。副次評価項目は虚血性脳卒中、静脈血栓塞栓症および全死亡であった。
DOACではアピキサバンが最も安全
心房細動患者(10万3,270例)では、ワルファリンと比較してアピキサバンが大出血(補正後ハザード比[aHR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.54~0.79)および頭蓋内出血(0.40、0.25~0.64)のリスク減少と関連していることが、また、ダビガトランは頭蓋内出血(0.45、0.26~0.77)のリスク減少と関連していることが認められた。一方、全死因死亡リスクの上昇が、リバーロキサバン内服患者(1.19、95%CI:1.09~1.29)、および低用量アピキサバン内服患者(1.27、95%CI:1.12~1.45)で確認された。
非心房細動患者(9万2,791例)では、ワルファリンと比較してアピキサバンが大出血(aHR:0.60、95%CI:0.46~0.79)、全消化管出血(0.55、0.37~0.83)、上部消化管出血(0.55、0.36~0.83)のリスク減少と関連していた。また、リバーロキサバンは、頭蓋内出血のリスク減少と関連がみられた(0.54、0.35~0.82)。一方、全死因死亡リスクの上昇が、リバーロキサバン内服患者(1.51、1.38~1.66)および低用量アピキサバン内服患者(1.34、1.13~1.58)において確認された。
なお著者は、英国のプライマリケアに限定されたものであり、アドヒアランスや処方の適応症に関する情報が不足していることなどを研究の限界として挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)