滲出性中耳炎で3ヵ月以上の難聴が確認された小児について、経口ステロイド薬の有効性を調べた初となる二重盲検プラセボ対照無作為化試験「OSTRICH試験」の結果、忍容性は良好だったが有意な改善効果は示されず、自然治癒率が高いことが明らかにされた。英国・カーディフ大学のNick A. Francis氏らによる検討で、「今回の結果は、経過観察やその他の外科的介入を支持するエビデンスとなった」と述べている。滲出性中耳炎による持続的な難聴に対しては、薬物療法の有効性は否定されており、概して外科的介入による治療が行われるが、治療選択肢に安全・安価で有効な薬物療法が加わることへの期待は高い。研究グループは、Cochraneレビューで見つけた、経口ステロイド薬の短期投与の有益性を示唆した試験結果(ただし検出力が低く、質的に低い)について、大規模試験で検証を行った。Lancet誌2018年8月18日号掲載の報告。
2~8歳の患児を対象にプラセボ対照試験、5週時点の聴力改善を評価
OSTRICH試験は、滲出性中耳炎に起因する症状が3ヵ月以上持続および両側性難聴が確認された2~8歳児を対象とし、経口ステロイドの短期投与により、容認できる聴力を取り戻せるかどうかが検証された。
被験者は2014年3月20日~2016年4月5日に、イングランドおよびウェールズの20施設(耳・鼻・咽喉[ENT]、小児耳鼻科、耳鼻科外来部門)で集め、スクリーニング後、適格患児を1対1の割合で無作為に2群に割り付け、プレドニゾロン(経口ステロイド)またはプラセボを投与した。
主要評価項目は、5週時点の純音聴力検査で容認できる聴力(少なくとも片耳が20dB HL以下で0.5、1、2、4kHzの周波数帯域が平均的に聞こえると定義)が確認された被験者の割合。すべての解析は、intention-to-treatにて行われた。
経口ステロイド群40%、プラセボ群33%で聴力改善
1,018例がスクリーニングを受け、389例が無作為化を受けた(経口ステロイド群200例、プラセボ群189例)。
5週時点の聴力検査を受けたのは、経口ステロイド群183例、プラセボ群180例。容認できる聴力が確認されたのは、それぞれ73例(40%)、59例(33%)であった。群間の絶対差は7%(95%信頼区間[CI]:-3~17)、必要治療数(NNT)は14であり、補正後オッズ比は1.36(95%CI:0.88~2.11、p=0.16)であった。
有害事象やQOL指標に関するあらゆる有意な群間差は認められなかった。
著者は、「経口ステロイド薬により14人に1人の聞こえは改善するが、QOLは変わらなかった」と指摘している。
(ケアネット)