小径の固有冠動脈疾患において、12ヵ月までの主要有害心イベント(MACE)の発生率は、薬剤コーティングバルーン(DCB)と薬剤溶出性ステント(DES)で類似しており、DESに対するDCBの非劣性が認められた。スイス・バーゼル大学のRaban V. Jeger氏らが、多施設共同非盲検無作為化非劣性試験「BASKET-SMALL 2」の結果を報告した。DCBは小径の固有冠動脈疾患に対する新たな治療法であるが、DESと比較した場合の安全性と有効性は明らかではなかった。結果を踏まえて著者は、「前拡張に成功した小径の固有冠動脈疾患は、DCBで安全に治療できる可能性がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2018年8月28日号掲載の報告。
DCBとDESのMACE発生率を前拡張に成功した758例で比較
研究グループは、直径<3mmの新規冠動脈病変を有し経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の適応となる患者を、前拡張成功後に、DCBによる血管形成術を行うDCB群と、第2世代DESを留置するDES群に、WEB登録システムを介して1対1の割合で無作為に割り付けた。抗血小板薬2剤併用療法は、現行ガイドラインに基づいて実施された。
主要評価項目は、12ヵ月後のMACE(心臓死、非致死性心筋梗塞、標的血管の血行再建術の複合)で、DESに対するDCBの非劣性を検証した(非劣性マージンは、MACEとの絶対リスク差の両側95%信頼区間[CI]上限値4%)。
2012年4月10日~2017年2月1日に、前拡張に成功した758例がDCB群(382例)とDES群(376例)に無作為に割り付けられた。
DCB群7.5%、DES群7.3%
per-protocol集団において、MACEの絶対差の95%CI上限値が非劣性マージンを下回り(95%CI:-3.83~3.93、p=0.0217)、DESに対するDCBの非劣性が示された。
最大解析対象集団(FAS)における12ヵ月後のMACE発生率は、DCB群7.5%、DES群7.3%であり、両群間で類似していた(ハザード比[HR]:0.97、95%CI:0.58~1.64、p=0.9180)。心臓関連死は、DES群で5例(1.3%)、DCB群では12例(3.1%)が確認された(FASにおいて)。
Academic Research Consortium(ARC)の定義に基づくprobable/definiteのステント血栓症(DCB群3例[0.8%]、DES群4例[1.1%]、HR:0.73[95%CI:0.16~3.26])と、BARC出血基準3~5の大出血(DCB群4例[1.1%]、DES群9例[2.4%]、HR:0.45[95%CI:0.14~1.46])が、最も多い有害事象であった。
なお、著者は、DCB群とDES群の両群で男性が多かったこと(70~77%)、定期的な血管造影による追跡調査が実施されておらず、イベント発生率が過小評価されている可能性があること、などを研究の限界として挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)