欧州委員会(European Commission)が求めている「ヨーロッパで行われる医薬品開発のためのすべての臨床試験は、終了後12ヵ月以内に結果をEU Clinical Trials Register(EUCTR)に報告すること」へのコンプライアンスは不良で、全試験の半数が順守されていないことが、英国・オックスフォード大学のBen Goldacre氏らによる後ろ向きコホート研究の結果、明らかにされた。製薬会社のコンプライアンスは良好であったが、大学の順守が不良であったという。これまでの多数のコホート研究で、臨床試験の結果が未報告であることが当たり前になっていることが示されている。米国では2007年に、この問題を解決するための法律が制定されたが、大半が無視を決め込んでいる状況だという。欧州連合(EU)でも、前述したような義務付けをしているが、コンプライアンスの状況はこれまで評価されていなかった。BMJ誌2018年9月12日号掲載の報告。
7,274試験の順守率、非順守の特性などを調査
研究グループは、欧州委員会が求めているコンプライアンスについて2016年12月21日時点で順守率を調べ、非順守に関する特性を明らかにするとともに、スポンサーのコンプライアンス状況をランク付けした。さらに、コンプライアンスをオンゴーイングで監査するためのツール構築を模索した。
対象となったのは、EUCTRへの登録1万1,531試験のうち、終了したと記載されていたか、結果が確認された可能性があった7,274試験。EUCTRでの結果の公表を主要評価項目とした。
コンプライアンスを評価するツールの構築で改善が可能
7,274試験のうち、結果が報告されていたのは49.5%(95%信頼区間[CI]:48.4~50.7)であった。
スポンサーが民間の試験のほうが、非民間の試験よりも、結果の報告率がかなり高い傾向が認められた(68.1 vs.11.0%、補正後オッズ比[OR]:23.2、95%CI:19.2~28.2)。また、登録試験数が多いスポンサーのほうが(77.9 vs.18.4%、補正後OR:18.4、15.3~22.1)、さらに直近に行われた試験のほうが(年当たりOR:1.05、95%CI:1.03~1.07)、報告率が高い傾向も認められた。
なお、EUCTRデータには、多数のエビデンスについて、入力の誤り、省略、矛盾があり、いくつかの試験についてコンプライアンス状況の確認が妨げられた。著者は、「EU登録データには概して、当局がコンプライアンスを評価することを妨げる矛盾が含まれている」として、報告状況やランキングが示される、オンライン検索可能なウェブリソース(データは毎月更新)を構築した。「個々の試験やスポンサーのコンプライアンス状況に関する、アクセシビリティでタイムリーな情報提供が、報告率の改善に役立つ可能性がある」とまとめている。
(ケアネット)