高齢者への不適正処方、入院の影響は/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2018/11/22

 

 高齢者にとって入院は、潜在的な不適正処方の独立関連因子であることが明らかになった。また、不適正処方は、患者の特性にかかわらず入院前より退院後のほうが、増える傾向があることも示されたという。スペイン・マドリード・コンプルテンセ大学のTeresa Perez氏らが、アイルランドの一般診療所の診療録を基に縦断研究を行い明らかにしたもので、BMJ誌2018年11月14日号で発表した。著者は、「結果は、高齢者における不適正処方に入院が及ぼす潜在的な悪影響を、考慮し解消する必要性を示すものだった」と述べ、「入院が高齢者の不適正処方にどのような影響を及ぼしているのか、また入院の潜在的有害性を最小限とする方法を明らかにすることが重要である」とまとめている。

アイルランド44ヵ所の一般診療所の高齢者について調査
 研究グループは2012~15年にかけて、アイルランド44ヵ所の一般診療所の診療録を基に、同診療所の65歳以上の患者を対象に試験を行った。

 高齢者の処方スクリーニングツールScreening Tool for Older Persons’ Prescription(STOPP)ver.2の45の基準を用いて、潜在的不適正処方が占める割合を算出し、患者特性で補正を行い、層別化Cox回帰分析(明らかな潜在的不適正処方基準を満たした発生率)と、ロジスティック回帰分析(1人の患者について潜在的不適正処方が1回以上発生したか否かの2項値による)の2通りで分析し、入院との関連を検証した。患者特性と診断名に基づく傾向スコアによりマッチングを行い、感度分析も行った。

患者の約半数に潜在的不適正な処方
 分析には3万8,229例が包含された。2012年時点での平均年齢は76.8歳(SD 8.2)、男性が43.0%(1万3,212例)だった。年に1回以上入院した患者の割合は、10.4%(2015年、3,015/2万9,077例)~15.0%(2014年、4,537/3万231例)だった。

 潜在的不適正処方を受けた患者の割合は、2012年の45.3%(1万3,940/3万789例)から2015年の51.0%(1万4,823/2万9,077例)の範囲にわたっていた。

 年齢や性別、処方薬数、併存疾患、医療保険の種類とは関係なく、入院は明らかに潜在的不適正処方基準を満たす割合が高かった。入院補正後ハザード比(HR)は1.24(95%信頼区間[CI]:1.20~1.28)だった。

 入院患者についてみると、潜在的不適正処方の発生率の尤度は、患者特性にかかわらず、退院後のほうが入院前よりも上昇した(補正後OR:1.72、95%CI:1.63~1.84)。なお、傾向スコア適合ペア分析でも、入院に関するHRはわずかな減少にとどまった(HR:1.22、95%CI:1.18~1.25)。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)