イギリスでは特に若い成人女性で耳たぶ以外の身体部位へのピアス装着の頻度が高く、問題が多発し健康サービスの支援を要する事例も多いことが、健康保護局感染症センターのAngie Bone氏らが実施した横断的世帯調査で明らかとなった。近年、イギリスでは美容的なボディピアシングが急増しているが、その実態は不明だという。医学、歯学論文では合併症の報告が相次いでおり、国会でも議論されているが、問題の大きさを把握するための検討はほとんどなかった。BMJ誌2008年6月21日号(オンライン版2008年6月12日)の報告。
2005年の全国的な世帯調査で1万503人を抽出
本研究は、2005年にイギリスで実施された全国的な横断的世帯調査である。16歳以上の1万503人が、地理的地域の無作為なサンプリングおよび所定の割り当てへの個人のサンプリングという2段階の行程を経て抽出された。16歳以上の国内人口プロフィールを反映するように、結果の重み付けが行われた。
主要評価項目は、ボディピアシングの全件数および年齢層別、性別、解剖学的部位別の推定値とし、16~24歳の年齢層では合併症に関連したピアシングや医療支援の求めの割合について推算した。
ボディピアシング率10%、16~24歳の約1/3に合併症、100人に1人が入院
耳たぶ以外のボディピアシング率は10%(1,049/1万302人、95%信頼区間:9.4~10.6%)であった。男性よりも女性に多く、若い年齢層で多かった。16~24歳の女性の約半数(46.2%)がピアシングをしたことがあると答えた(305/659人、95%信頼区間:42.0~50.5%)。
ピアシングの部位は多い順に、臍、鼻、耳たぶ以外の耳部、舌、乳首、眉などであった。
16~24歳のピアシングをしている754人のうち、233人(31.0%)が合併症を報告した(95%信頼区間:26.8~35.5%)。そのうち医療支援を必要としたのは115人(15.%、95%信頼区間:11.8~19.5%)であり、入院を要したのは7人(0.9%、95%信頼区間:0.3~3.2%)であった。
Bone氏は、「特に若い成人女性でボディピアシングの頻度が高く、問題が多発し健康サービスの支援を要する事例も多い」と結論し、「入院を要する重篤な合併症は多くはないようだが、合併症が起こる可能性は長期にわたるため健康サービスに深刻な負担を課している。合併症を増やすリスク因子を同定してピアス施術者、その客、医療者に注意を喚起し、ボディピアシングの安全性を改善する情報を提供するための研究が必要である」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)