非小細胞肺がん(NSCLC)の患者を対象に、ルーチンの診療から得た電子健康記録(EHR)と網羅的ゲノム解析(CGP)をリンクしたデータが、治療選択などに有効であることが明らかにされた。遺伝子のドライバー変異と標的治療の有効性の関連や、遺伝子変異数(TMB)と抗PD-1/PD-L1療法反応性との関連などが確認されたという。米国企業Foundation MedicineのGaurav Singal氏らが、約2万9,000例のがん患者データベースの中から、NSCLC患者4,000例超について解析し明らかにしたもので、JAMA誌2019年4月9日号で発表した。今回の成果について著者は「ルーチンの診療に由来する臨床ゲノムデータベースの構築が可能であることを示すもので、オンコロジーにおけるこのようなアプローチを評価する、さらなる研究と発見があることを支持することが示された」とまとめている。
がんゲノミクスと患者の臨床アウトカムなどを探索的解析
研究グループは、米国内275ヵ所のがん診療外来患者2万8,998例について、EHR臨床データとCGPをリンクしたデータを基に試験を行った。2011年1月~2018年1月のデータが入手できたNSCLC患者4,064例のデータについて、がんゲノミクスと患者の臨床アウトカムを含む特徴との関連性を探索的に検証した。
具体的には、ドライバー変異を含む腫瘍CGP、TMB、EHRから得られた臨床的特徴と、全生存期間(OS)、治療を受けた期間、最大治療反応性(EHRの治療担当医による記録で確認)、治療の臨床的有効性(安定[SD]、部分奏効[PR]、完全奏効[CR]の患者割合)の関連を調べた。
ドライバー変異、標的治療で生存期間7ヵ月超延長
NSCLC患者4,064例の年齢中央値は66.0歳、女性の割合は51.9%、喫煙歴ありは3,183例(78.3%)だった。3,153例(77.6%)が非扁平上皮NSCLCで、
EGFR、
ALK、
ROS1に遺伝子変異が認められたのは、それぞれ701例(17.2%)、128例(3.1%)、42例(1.0%)だった。また、7年間で1,946例が死亡した。
ドライバー変異患者のうち、標的治療を受けた575例は受けなかった560例に比べ、OSが改善し、進行が診断されてからの生存期間中央値はそれぞれ18.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:15.2~21.7)、11.4ヵ月(9.7~12.5)だった(p<0.001)。
TMBは、喫煙者が8.7(IQR:4.4~14.8)と、非喫煙者の2.6(1.7~5.2)より有意に高かった(p<0.001)。また遺伝子変異のある人が、ない人に比べ有意に低く、
EGFRに関しては変異あり群3.5(1.76~6.1)vs.なし群7.8(3.5~13.9)(p<0.001)、
ALKは同2.1(0.9~4.0)vs.7.0(3.5~13.0)(p<0.001)、
RETは4.6(1.7~8.7)vs.7.0(2.6~13.0)(p=0.004)、
ROS1は4.0(1.2~9.6)vs.7.0(2.6~13.0)(p=0.03)だった。
抗PD-1/PD-L1療法を行った1,290例(31.7%)についてみると、TMB値が20以上群は20/Mb未満群に比べOSが延長し(16.8ヵ月[95%CI:11.6~24.9]vs.8.5ヵ月[7.6~9.7]、p<0.001)、長期間治療を受けていた(7.8ヵ月[5.5~11.1]vs.3.3ヵ月[2.8~3.7]、p<0.001)。臨床的有効となった患者割合も高率だった(80.7% vs.56.7%、p<0.001)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)