スウェーデン・Sahlgrenska大学病院のBengt I. Erikssonらが参加した抗凝固剤rivaroxaban(経口直接作用型第Xa因子阻害剤)の国際共同第III相臨床試験RECORD 1の検討結果。人工股関節全置換術を受けた患者の長期的な血栓予防について、有効性と安全性をエノキサパリン皮下注(国内販売名:クレキサン皮下注、2008年1月承認)とを比較した結果、安全性は同等で、rivaroxabanのほうが有効であると報告している。NEJM誌2008年6月26日号より。
4,541例を治験薬経口投与と対照薬皮下注射に割り付け
本無作為化二重盲検試験は、患者4,541例を、rivaroxaban 10mgを1日1回・術後から経口投与するグループと、エノキサパリン40mgを1日1回・手術前日夕方から皮下注するグループとに割り付け、プラセボ錠剤か注射を追加投与した。
有効性の主要転帰は、深部静脈血栓症(症候性または、両側静脈造影で検出された無症候性のもの)、非致死的肺塞栓症、36日時点(範囲30~42日)での全死因死亡の複合とした。
有効性の副次的転帰は、主要静脈血栓塞栓症(近位深部静脈血栓症、非致死的肺塞栓症または静脈血栓塞栓症による死亡)とした。
安全性に関する主要転帰は重大な出血。
静脈血栓塞栓症のリスクは1.7ポイント低下
被験者のうち1,388例を除外した計3,153例については優位性解析を、108例を除外した4,433例について安全性解析を行った。
その結果、rivaroxaban群1,595例中18例(1.1%)、エノキサパリン群1,558例中58例(3.7%)でそれぞれ有効性についての主要転帰が確認された(絶対リスク低下:2.6ポイント、95%信頼区間:1.5~3.7、P<0.001)。
主要静脈血栓塞栓症は、rivaroxaban群1,686例中4例(0.2%)、エノキサパリン群1,678例中33例(2.0%)であった(1.7ポイント、1.0~2.5、P<0.001)。
重大な出血は、rivaroxaban群2,209例中6例(0.3%)、エノキサパリン群2,224例中2例(0.1%)だった(P=0.18)。
待機的人工股関節全置換術を受ける患者の長期血栓予防に関する有意な有効性は、rivaroxaban経口投与(1日1回10mg)のほうが、エノキサパリン皮下注(1日1回40mg)よりもあり、両薬の安全性プロフィールは同等であると結論している。
(武藤まき:医療ライター)