消化管がんの2次予防において、ビタミンD補充はプラセボと比較して、5年無再発生存率を改善しないことが、東京慈恵会医科大学の浦島 充佳氏らが実施したAMATERASU試験で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年4月9日号に掲載された。消化管がんの2次予防では、ビタミンD補充の有用性を示唆する観察研究の報告があり、無作為化試験の実施が求められていた。
術後ビタミンD3補充の有用性を評価する日本の無作為化試験
本研究は、消化管がんにおける術後ビタミンD
3補充療法の有用性の評価を目的に、単施設(国際医療福祉大学病院)で行われた二重盲検プラセボ対照無作為化試験である(国際医療福祉大学病院と東京慈恵会医科大学の助成による)。
対象は、年齢30~90歳、Stage I~IIIの消化管がん(食道から直腸まで)の患者であった。被験者は、ビタミンDカプセル(2,000IU/日)またはプラセボを経口投与する群に、3対2の割合で無作為に割り付けられた。投与は、術後の初回外来受診時(術後2~4週)に開始され、試験終了まで継続された。
主要評価項目は、無再発生存期間(割り付けからがんの再発または全死因死亡までの期間)とした。また、ベースラインの25-ヒドロキシビタミンD(25[OH]D)値で3群(<20ng/mL、20~40ng/mL、>40ng/mL)に分けてサブグループ解析を行った。
患者登録は2010年1月~2016年4月に行われ、フォローアップは2018年2月に終了した。417例が登録され、ビタミンD群に251例、プラセボ群には166例が割り付けられた。
5年無再発生存率:77% vs.69%、年齢で補正すると有意に良好
患者はすべて日本人であった。フォローアップ率は99.8%で、フォローアップ期間中央値は3.5年(四分位範囲[IQR]:2.3~5.3)、最長7.6年であった。ベースラインの全体の年齢中央値は66歳で、34%が女性であった。がんの部位は、食道が9.6%、胃が41.7%、小腸が0.5%、大腸が48.2%で、StageはIが44%、IIが26%、IIIは30%だった。
再発または死亡は、ビタミンD群が50例(20%)、プラセボ群は43例(26%)で発生し、死亡はそれぞれ37例(15%)、25例(15%)だった。
5年無再発生存率は、ビタミンD群が77%、プラセボ群は69%であり、両群に有意な差は認めなかった(再発または死亡のハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.50~1.14、p=0.18)。また、5年全生存率は、それぞれ82%、81%であり、有意差はなかった(死亡のHR:0.95、0.57~1.57、p=0.83)。
サブグループ解析では、ベースラインの25(OH)D値が20~40ng/mLの集団において、5年無再発生存率がプラセボ群に比べビタミンD群で有意に優れた(85% vs.71%、再発または死亡のHR:0.46、95%CI:0.24~0.86、p=0.02、交互作用のp=0.04)。
また、ベースラインの年齢中央値がビタミンD群で高かった(67歳vs.64歳)ため、事後解析として年齢の四分位でHRを補正したところ、再発または死亡の累積ハザードが、ビタミンD群で有意に良好だった(補正HR:0.66、95%CI:0.43~0.99、p=0.048)。
骨折が、ビタミンD群3例(1.3%)、プラセボ群5例(3.4%)で、尿路結石が、ビタミンD群2例(0.9%)で発現した。また、入院を要した有害事象はビタミンD群19例(8.4%)、プラセボ群9例(6.1%)で、原発がんの部位以外の臓器に新たに発現したがんは、それぞれ15例(6.6%)、8例(5.4%)で認められた。
著者は、「ビタミンD補充は、ベースライン25(OH)D値20~40ng/mLの集団で有効であったが、これは探索的な検討であるため解釈には注意を要する」と指摘し、「生存に関して、至適な25(OH)D値の範囲はがん種によって異なる可能性がある。また、2,000IU/日という用量は、低25(OH)D値のサブグループでは、ビタミンD値を十分に上昇させるには不十分だった可能性もある」と考察している。
(医学ライター 菅野 守)