罰則による入院後合併症削減プログラム、効果は?/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2019/07/17

 

 米国では、「入院後発生合併症削減プログラム(Hospital Acquired Condition Reduction Program:HACRP)」の下で、メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)が、安全性に関する実績が低い病院に金銭的な罰則を科している。同国ミシガン大学のRoshun Sankaran氏らは、この罰則の影響について調査を行い、入院後発生合併症(HAC)や30日再入院、30日死亡の発生率に変化はなく、臨床的に意義のある改善に進展はみられないことを示した。BMJ誌2019年7月3日号掲載の報告。

メディケア受給入院患者を対象とするコホート研究
 研究グループは、HACRPによる罰則と臨床アウトカムの変化の関連について検討するために、回帰不連続デザインによる後ろ向きコホート研究を実施した(米国国立老化研究所[NIA]などの助成による)。

 2014年7月23日~2016年11月30日の期間に、米国の3,238の急性期病院で1つ以上のHACを発症し、退院した1,547万334例のメディケア受給者(出来高払い制)を対象とした。

 主要評価項目は、1,000エピソード当たりのHACのエピソード数、30日再入院率、30日死亡率とし、HACRPによる罰則を科された病院と、科されなかった病院を比較した。

過度な罰則で、ケアの不公平性を悪化させる可能性も
 2015年の会計年度に、HACRPの下で罰則を科せられた724病院のうち、708病院が研究に含まれた。

 1,000エピソード当たりのHAC数は、罰則を科された病院が2.72件、罰則を科されなかった病院は2.06件であり、30日再入院率はそれぞれ14.4%および14.0%、30日死亡率は双方の病院とも9.0%だった。罰則を科された病院は科されなかった病院に比べ、規模が大きく、教育施設が多く、社会経済的地位が低い患者の割合が高かった。

 HACRPの罰則により、1,000エピソード当たりのHAC数は0.16件(95%信頼区間[CI]:-0.53~0.20)減少し、30日再入院率は0.36ポイント(-1.06~0.33)、30日死亡率は0.04ポイント(-0.59~0.52)低下したが、いずれも有意な変化ではなかった。また、病院特性別の解析では、すべての病院特性に関して、罰則による臨床アウトカムの改善に明確なパターンは認められなかった。

 著者は、「HACRPは、不利な条件に置かれた患者へのケアを行う病院に過度な罰則を科すことで、ケアの不公平性を悪化させる可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)