本研究はスタチン治験・TNT(Treating to New Targets study)の事後解析の1つ。高比重リポタンパク(HDL)コレステロール値と心血管イベントとの間にみられる強い逆相関性が、低比重リポタンパク(LDL)コレステロールの極低値との間でもみられるかを検証したもの。オーストラリア心臓血管研究所のPhilip Barter氏らTNT研究グループによる報告は、NEJM誌9月27日号に掲載された。
研究ターゲットはLDL値が70mg/dL未満
解析はまず、最近終了したTNTスタディ参加患者9,770例のHDLコレステロール値でその予測能が評価された。
主要評価項目は、主な心血管イベント(虚血性心疾患、非致死性・非処置の心筋梗塞、心停止後蘇生、致死性あるいは非致死性の脳卒中による死亡)の初回発症までの時間で、スタチン投与後3ヵ月目のHDLコレステロール値との予測的な関係について単変量・多変量解析が行われた。
そして同様の評価が、LDLコレステロール値が70mg/dL(1.8mmoL/L)未満である特定の治験者層に対しても行われた。
心血管イベントのリスクが少ないことが観察された
TNT試験コホート全体でみると、HDLコレステロールを連続変数とみなした時も、被験者をHDLコレステロール値の五分位数によって階層化した場合も、スタチン治療群のHDLコレステロール値から心血管イベントを予測することは可能だった。
また、スタチン治療群をLDLコレステロール値によって階層化し分析したところ、HDLコレステロール値と心血管イベントとは有意な関連がみられ(P=0.05)、LDLコレステロールが70mg/dL未満の患者でも、HDLコレステロール値が最大五分位群の患者は最小五分位群の患者より心血管イベントのリスクが少ないことが見受けられた(P=0.03)。
研究グループは、「HDLコレステロール値はスタチン治療患者における主な心血管イベントの予測因子であることが確認され、その関係は70mg/dL未満のLDLコレステロール値の患者でも観察された」と結論付けている。
(武藤まき:医療ライター)