試験の結果が有利に見えるように、曲解する、読者に誤解を与えるといった「spin」(印象操作)について、そのspinを研究した論文ではspinが認められるかを、オーストラリア・シドニー大学のLisa Bero氏らが調べた。結果は14%で認められたという。これまでに、spin研究者(PhDを持つ研究者やバイオメディカル研究者)が行ったspin研究では、さまざまな科学論文や試験デザインで幅広くspinが認められ、システマティックレビューによってspinのprevalence(有病率)中央値は、システマティックレビュー論文26%に対して試験論文では56%であることが示されていた。BMJ誌2019年12月18日号クリスマス特集号の「Sweet Little Lies」より。
研究結果の表現や解釈のゆがみ、結果と解釈の不一致などがみられるかを調査
研究グループは、科学論文における35のspin研究論文を対象にメタ解析を行い、spin研究におけるspinを特定し“有病率”を調べた。
spinの定義は、(1)研究結果の表現や解釈をゆがめた報告や、まぎらわしい解釈を創作している、(2)結果と解釈が一致しておらず、解釈では良好であると示されているがデータや結果が伴っていない、(3)因果関係を試験デザインから導き出せない、(4)結果の過剰解釈や不適切な外挿が認められる、とした。
14%という結果をどう解釈する?
35のspin研究のうち、spinが認められたのは5件(14%、95%信頼区間[CI]:4.8~30.3)だった。そのうち2件(質的改善介入試験または精神科治療試験のレビュー)は、spin定義の(1)研究結果の表現や解釈をゆがめた報告をしていた。また、3件(レビュー2件と横断研究1件)は、(4)結果の過剰解釈や不適切な外挿を行っていた。
この結果について著者は、「Conclusion」として、「spinはspin研究でも起きていることが示された。このトピックに関する研究者は、自分たちの所見のspinに対して敏感でなければならない。われわれの研究は、厳密な介入の必要性を否定するものではなく、さまざまな研究分野のspinを減らすためのものである」と述べている。
また同時に、「Conclusion with spin」として次のような“解釈”も示している。「spin研究でのspin発生は他のトピックの研究よりも少ないだろうという、われわれの仮説は証明された。spin研究者は他の研究者よりも、自分たちの解釈をspinすることはまれなようである。彼らが、研究報告におけるspinや無駄な研究を減らす介入を開始し検証できるよう、莫大なresources(資金)を投じるべきであろう」。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)