過去10年で米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)が承認した新薬について、他の5つの独立組織(4ヵ国[カナダ、フランス、ドイツ、イタリア]の保健当局とPrescrire誌を発行する国際非営利組織)のうち少なくとも1組織によって「治療的価値が高い」と評価されたのは3分の1に満たないことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院・ハーバード大学医学大学院のThomas J. Hwang氏らによる後ろ向きコホート研究の結果で明らかにされた。FDAおよびEMAによる新薬承認は、医薬品開発・承認の促進プログラムが一因し、これまでになく多数かつ迅速になっているという。今回の検討では、FDAおよびEMAによって治療的価値が高いとされた新薬は、非迅速開発薬よりも迅速開発薬で有意に多く、FDAで承認されたがEMAでは承認されなかった迅速承認薬の大半は治療的価値が低いと評価されていることも示された。BMJ誌2020年10月7日号掲載の報告。
治療的価値が高いとされた新薬の割合などを調査
研究グループは本検討で、FDAおよびEMAにより承認された新薬の治療的価値を特徴付けること、また、FDAおよびEMAによる評価と開発促進プログラムによる承認調整との関連を明らかにすることを目的とした。
2007~17年にFDAおよびEMAで承認された新薬について、2020年4月1日までフォローアップを行い、5つの独立組織(Prescrire、カナダ・フランス・ドイツ・イタリアの保健当局)による新薬の評価法を用いて治療的価値を測定した。
治療的価値が高いとされた新薬の割合、および治療的価値が高いとの評価と開発促進プログラム該当の有無との関連を調べた。
FDAとEMAの承認新薬、他組織で治療的価値が高いとされたのは31%
2007~17年に、FDAが320、EMAが268の新薬を承認していた。そのうち、少なくとも1つ以上の開発促進プログラムに該当していた新薬は、FDAは181(57%)あったが、EMAは39(15%)であった。
治療的価値の評価が行われていた267の新薬において、少なくとも1つの組織で治療的価値が高いと評価されたのは84(31%)であった。
治療的価値が高いと評価された割合は、非迅速開発薬と比較して迅速開発薬のほうが、FDA承認薬(45%[69/153]vs.13%[15/114]、p<0.001)、EMA承認薬(67%[18/27]vs.27%[65/240]、p<0.001)ともに有意に高率であった。
治療的価値が高いと独立的に評価された新薬について、開発促進プログラムの感度および特異度は、FDA承認薬では82%(95%信頼区間[CI]:72~90)と54%(47~62)であったが、EMA承認薬では25.3%(16.4~36.0)と90.2%(85.0~94.1)であった。
結果を踏まえて著者は、「政策立案者と規制当局は、評価プロセスの結果と新薬承認の制限について、患者や医師にもっとよく知らせる方法を模索すべきである」と提言している。
(ケアネット)