待機的経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の周術期心筋壊死の減少において、チカグレロルのクロピドグレルに対する優越性は示されなかった。また、大出血は増大しなかったが、30日時点での小出血の発生頻度はチカグレロル群で高かった。フランス・ソルボンヌ大学のJohanne Silvain氏らによる第IIIb相非盲検無作為化試験「ALPHEUS試験」の結果で、著者は、「本結果は待機的PCIの標準治療としてクロピドグレルの使用を支持するものであった」とまとめている。PCIに関連した心筋壊死の頻度は高く、患者の長期予後に影響をもたらす。研究グループは、これまで待機的PCIにおけるチカグレロル投与の評価は行われていないが、クロピドグレルよりも周術期虚血性合併症を低減する可能性があり、最近では治療に推奨されているとして、チカグレロルのクロピドグレルに対する優越性を検証した。Lancet誌オンライン版2020年11月14日号掲載の報告。
フランスとチェコの49病院で無作為化試験
ALPHEUS試験は、フランスとチェコの49病院で行われた。安定性冠動脈疾患を有し、PCI適応で、1つ以上の高リスクの特性を有する患者を、1対1の割合で無作為に2群に割り付け、一方にはチカグレロル(負荷投与量180mg、その後は1日2回90mgを30日間)を、もう一方にはクロピドグレル(負荷投与量300~600mg、その後は1日75mgを30日間)を投与した。割り付けはウェブ・レスポンスシステムを用いて行い、試験施設で層別化も行った。
主要アウトカムは、PCI関連のタイプ4(aまたはb)心筋梗塞または重大心筋傷害の複合であり、主要安全性アウトカムは大出血であった。いずれもPCI後48時間以内(または同時間内の退院時)に評価した。主要解析は、intention-to-treat(ITT)集団に発生したすべてのイベントをベースとして行われた。
標準治療はクロピドグレルの使用を支持する結果に
2017年1月9日~2020年5月28日に、49病院で1,910例が無作為化を受けた(チカグレロル群956例、クロピドグレル群954例)。チカグレロル群の15例(非PCIが13例、同意撤回2例)、クロピドグレル群の12例(非PCIが9例、同意撤回2例、無作為化2回目1例)が除外され、ITT集団はチカグレロル群941例、クロピドグレル群942例であった。
48時間時点で観察された主要アウトカムは、チカグレロル群334/941例(35%)、クロピドグレル群341/942例(36%)であった(オッズ比[OR]:0.97、95%信頼区間[CI]:0.80~1.17、p=0.75)。
主要安全性アウトカムの発生は、両群で差はなかった。48時間時点の大出血(BARC 3または5)は、チカグレロル群1/941例(<1%)vs.クロピドグレル群なし(p=0.50)、30日時点は同5/941例(1%)vs.2/942例(<1%)であった(OR:2.51[95%CI:0.49~13.0]、p=0.29)。しかしながら、30日時点で評価した小出血イベントの頻度が、クロピドグレル群(71/942例[8%])よりもチカグレロル群(105/941例[11%])で高率だった(OR:1.54、95%CI:1.12~2.11、p=0.0070)。
(ケアネット)