駆出率35%以下の症候性慢性心不全患者において、選択的心筋ミオシン活性化薬のomecamtiv mecarbilはプラセボと比較して、心不全・心血管死の複合イベント発生リスクを有意に抑制したことが示された。心血管死リスクのみについては、抑制効果はみられなかった。米国・サンフランシスコ退役軍人医療センターのJohn R. Teerlink氏らGALACTIC-HF研究チームが、8,256例を対象に行った第III相プラセボ対照無作為化比較試験の結果を報告した。omecamtiv mecarbilは、駆出率が低下した心不全患者の心機能を改善することが示されていたが、心血管アウトカムへの影響については確認されていなかった。NEJM誌オンライン版2020年11月13日号掲載の報告。
駆出率35%以下の症候性慢性心不全患者を対象に試験
研究グループは、症候性慢性心不全で駆出率が35%以下の患者(外来・入院)8,256例を対象に試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方にはomecamtiv mecarbilを(薬物動態学的に用量を決め、25mg、37.5mg、50mgのいずれかを1日2回)、もう一方にはプラセボを、心不全の標準治療に加えそれぞれ投与した。
主要アウトカムは、初回心不全イベント(心不全による入院/救急受診)または心血管死の複合とした。
心不全・心血管死発生率、omecamtiv mecarbil群37.0% vs.プラセボ群39.1%
追跡期間中央値21.8ヵ月において、主要複合アウトカムの発生はomecamtiv mecarbil群1,523/4,120例(37.0%)、プラセボ群1,607/4,112例(39.1%)だった(ハザード比[HR]:0.92、95%信頼区間[CI]:0.86~0.99、p=0.03)。
全体で心血管死はomecamtiv mecarbil群808例(19.6%)、プラセボ群798例(19.4%)だった(HR:1.01、95%CI:0.92~1.11、p=0.86)。カンザスシティ心筋症質問票(Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire)の症状スコア合計の、ベースラインからの変化についても、両群で有意差はなかった。
ベースラインから24週までの、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド値の変化は、omecamtiv mecarbil群がプラセボ群に比べ10%低く、心臓トロポニンI値の中央値は4ng/L高かった。
心虚血および心室性不整脈イベントの発現頻度は、両群で同程度だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)