エドキサバン、TAVR後の心房細動でビタミンK拮抗薬に非劣性/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2021/09/15

 

 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)の成功後に心房細動がみられる患者(主に慢性心房細動)の治療において、経口直接第Xa因子阻害薬エドキサバンは、ビタミンK拮抗薬に対し有効性の主要アウトカムが非劣性であるが、優越性は不明であり、消化管出血が多いことが、オランダ・エラスムス大学医療センターのNicolas M. Van Mieghem氏らが実施した「ENVISAGE-TAVI AF試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年8月28日号で報告された。

14ヵ国173施設の非盲検無作為化試験

 本研究は、日本を含む14ヵ国173施設が参加した非盲検無作為化試験であり、2017年4月~2020年1月の期間に参加者の登録が行われた(Daiichi Sankyoの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、重症大動脈弁狭窄症に対するTAVRが成功した後に、30秒以上持続する慢性または初発の心房細動がみられる患者であった。被験者は、エドキサバン(60mgまたは30mg、1日1回)またはビタミンK拮抗薬(ワルファリン、フェンプロクモン、アセノクマロール、フルインジオン)の投与を受ける群に無作為に割り付けられた。

 有効性の主要アウトカムは、臨床的な有害イベント(全死因死亡、心筋梗塞、虚血性脳卒中、全身性血栓塞栓症、人工弁血栓症、大出血)の複合とされた。安全性の主要アウトカムは大出血であった。アウトカムの判定者には、割り付け情報が知らされなかった。

 階層的検定計画に基づき、有効性および安全性の主要アウトカムの非劣性検定が連続的に行われた。ハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)の上限値が1.38を超えない場合に、エドキサバンの非劣性が確定された。大出血に関してエドキサバンの非劣性と優越性が確認された場合に、引き続き有効性の優越性検定を行うこととされた。

有効性の主要アウトカム:100人年当たり17.3 vs.16.5

 1,426例が登録され、エドキサバン群とビタミンK拮抗薬群に713例ずつが割り付けられた。全体の平均年齢は82.1歳、47.4%が女性であった。99%でTAVR施行前から心房細動がみられ、初発心房細動は15例のみだった。試験期間中に、エドキサバン群の30.2%(215例)、ビタミンK拮抗薬群の40.5%(289例)が投与を中止した。

 有効性の主要アウトカムは、エドキサバン群の170例(17.3/100人年)、ビタミンK拮抗薬群の157例(16.5/100人年)で認められ(HR:1.05、95%CI:0.85~1.31、非劣性検定のp=0.01)、エドキサバン群のビタミンK拮抗薬群に対する非劣性が確定された。

 大出血は、エドキサバン群の98例(9.7/100人年)、ビタミンK拮抗薬群の68例(7.0/100人年)でみられ(HR:1.40、95%CI:1.03~1.91、非劣性検定のp=0.93)、非劣性は確認されなかった。この差の原因は、主にエドキサバン群で消化管の大出血が多いためであった(56例[5.4/100人年]vs.27例[2.7/100人年]、HR:2.03、95%CI:1.28~3.22)。プロトンポンプ阻害薬が投与されていた患者の割合は、両群で同程度だった(71.7%、69.0%)。

 この段階で、階層的検定が不成功となったため、エドキサバン群の優越性に関する正式な検定は行われなかった。

 100人年当たりでみた全死因死亡の発生は、エドキサバン群が7.8、ビタミンK拮抗薬群は同9.1(HR:0.86、95%CI:0.64~1.15)であり、虚血性脳卒中はそれぞれ2.1および2.8(0.75、0.43~1.30)、心筋梗塞は1.1、0.7(1.65、0.65~4.14)、全身性血栓塞栓症は0.2、0.3(ハザード比は算出していない)であった。人工弁血栓症は両群で発現しなかった。また、100人年当たりでみた全死因死亡または脳卒中の発生は、エドキサバン群が10.0、ビタミンK拮抗薬群は11.7(HR:0.85、95%CI:0.66~1.11)だった。

 著者は、「ビタミンK拮抗薬群では、投与中止例の割合が高かったことなどが、出血のアウトカムに影響を及ぼした可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)