僧帽弁手術において、三尖弁輪形成術を併施した患者は僧帽弁単独手術の患者に比べ、重度の三尖弁逆流への進行が少ないことに起因し、術後2年時点のイベント(三尖弁の再手術、三尖弁逆流の悪化、死亡)発生は有意に少なかったが、永久ペースメーカー植込みが高頻度であることが、米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のJames S. Gammie氏らCardiothoracic Surgical Trials Network(CTSN)による無作為化臨床試験で明らかになった。三尖弁逆流は重度の器質的僧帽弁閉鎖不全症患者によくみられる症状であるが、中等度程度の三尖弁逆流を有する患者において僧帽弁手術の際に三尖弁輪形成を行うかどうかを決定するには、これまでエビデンスが不十分であった。NEJM誌オンライン版2021年11月13日号掲載の報告。
僧帽弁手術+三尖弁輪形成術併施と僧帽弁単独手術を比較
研究グループは、中等度の三尖弁逆流または三尖弁輪の拡大(40mm以上、または21mm/m
2)を伴う中等度未満の三尖弁逆流を有する器質的僧帽弁閉鎖不全症により僧帽弁手術を受ける患者401例を、三尖弁輪形成術(TA)併施群(手術+TA群)と僧帽弁手術単独群に、1対1の割合に無作為に割り付けた。
2年時点の主要評価項目は、三尖弁逆流による再手術、三尖弁逆流の悪化(ベースラインから2段階悪化)、重度三尖弁逆流の残存、または死亡の複合であった。
三尖弁輪形成術併施で主要評価項目イベントは減少、ペースメーカー植込みは増加
手術+TA群は手術単独群と比較し、主要評価項目のイベント発生頻度は低かった(3.9% vs.10.2%)(相対リスク:0.37、95%信頼区間[CI]:0.16~0.86、p=0.02)。2年死亡率は、手術+TA群3.2%、手術単独群4.5%であった(0.69、0.25~1.88)。2年間に三尖弁逆流が悪化した患者の割合は、手術+TA群が手術単独群より低率だった(0.6% vs.6.1%、相対リスク:0.09、95%CI:0.01~0.69)。
一方、2年時点の主要心脳血管系有害事象(MACCE、全死亡・脳卒中・重篤な心不全イベントの複合)の発現頻度、ならびに機能状態およびQOLの指標は両群で同等であったが、永久ペースメーカー植込みの頻度は、手術+TA群が手術単独群より高率であった(14.1% vs.2.5%、率比:5.75、95%CI:2.27~14.60)。
これらの結果を踏まえて著者は、「三尖弁逆流の進行抑制が長期的な臨床的有益性をもたらすかどうか、さらなる長期の追跡調査が必要である」とまとめている。
(ケアネット)