慢性冠動脈疾患の治療法に関する臨床試験「COURAGE」では、最適薬物療法に経皮的冠動脈介入(PCI)を加えても、死亡率や心筋梗塞発生率の改善につながらなかった。しかし、最適薬物療法+PCIがQOLを改善できるかどうかを検証していた、同試験メンバーのWilliam S. Weintraub氏(米国・Christiana Care Health System)らは、「PCI追加によって、治療初期にはよりQOLが改善されるが、3年後には差がなくなる」と報告した。NEJM誌2008年8月14日号より。
2,287例を薬物単独群とPCI追加群に割り付け
慢性冠動脈疾患患者2,287例を無作為に、PCI+最適薬物療法群(PCI群)と最適薬物療法単独群(薬物療法群)に割り付けた。狭心症に特有の健康状態の評価は「Seattle Angina Questionnaire」(SAQ;0~100のスコアが高いほど良好な健康状態を示す)を用いて、また全般的な身体・精神機能は「RAND-36=36項目健康調査」によって評価した。
24ヵ月までなら重症者ほどPCIの利点が大きい
ベースラインで狭心症の認められなかった患者は22%だが、3ヵ月後にはPCI群で53%、薬物療法群で42%となった(P<0.001)。
またベースラインにおけるSAQスコアの平均(±SD)は、身体機能制限が66±25、狭心症の安定性が54±32、狭心症の頻度が69±26、治療満足度が87±16、QOLは51±25だった。
3ヵ月時点までのPCI群対薬物療法群のスコアは、身体機能制限が76±24対72±23(P = 0.004)、狭心症安定性が77±28対73±27(P = 0.002)、狭心症頻度が85±22対80±23(P<0.001)、治療満足度が92±12対90±14(P<0.001)、QOLが73±22対68±23(P<0.001)で、いずれもPCI群のほうが薬物療法群を上回った。
一般に、6~24ヵ月間ではPCIの利点が大きく、より狭心症が重症な患者ほどPCIの利点は大きかった。
RAND-36でも、いくつかの項目でPCIに類似の利点増加が見られた。しかし36ヵ月後には両群間の健康状態に有意差はなくなった。
このためWeintraub氏は「安定狭心症患者の健康状態は、中央値4.6年の追跡期間中、PCI群でも最適薬物療法群でも改善された。特にPCI群では36ヵ月間だけでありわずかだが、有意な利点増加が見られた」と結論付けている。
(武藤まき:医療ライター)