保険請求データを基に無作為化臨床試験(RCT)のデザインや測定方法を厳密に模倣した非無作為化試験が、RCTと同様の結論に達することは、容易ではないが可能であることが示された。米国・ハーバード大学のShirley V. Wang氏らが、32件のRCTとデータベースによる模倣試験を比較した結果を報告した。結果の一致は合致基準によって異なり、模倣の違い、偶然、残留交絡が結果の逸脱に影響する可能性があり、解読は困難であることが明らかにされた。結果を踏まえて著者は、「RCTのエビデンスがない場合、データベース試験はRCTのエビデンスを補完し、臨床で医薬品をどのように用いるかの理解を深めることが可能である」と述べている。JAMA誌2023年4月25日号掲載の報告。
32件のRCTについて、集団、介入、アウトカムなどの模倣試験を実施
研究グループは、医薬品について行われたRCT(終了30件+現在進行中2件)と、それらRCTの設計パラメータ(集団、介入、対照薬、アウトカム、時間[PICOT])を用いて模倣したデータベース試験(模倣試験)を行い、RCTデータベース試験ペア法で一致の程度を定量化した。
模倣試験は、2017~22年の3つの米国医療保険請求データベース(Optum Clinformatics、MarketScan、Medicare)を基に、傾向スコアマッチング法を用いて行った。模倣試験の参加・除外基準は、対応するRCTを模倣し事前に規定した。比較対象としたRCTは、検出力や主な交絡因子、保険データで模倣可能なエンドポイントなど、実現可能性に基づき選択した。
模倣試験は、対応するRCT試験の主要アウトカムに焦点を当てて行い、その結果をRCTと比較し、ピアソン相関係数や統計学的有意性、推定値、標準化差異の一致率など、事前定義された分類指標で評価した。
RCTと模倣試験、ピアソン相関係数は0.82
RCTとデータベース模倣試験の結果の一致の程度は、ピアソン相関係数0.82(95%信頼区間[CI]:0.64~0.91)で、統計学的有意性の一致率は75%、推定値の一致率66%、標準化差異の一致率75%であった。
模倣試験の設計や測定方法がより類似したRCT(16件)のみで行った事後分析では、より一致率が高かった(ピアソン相関係数:0.93[95%CI:0.79~0.97]、統計学的有意性の一致率:94%、推定値の一致率:88%、標準化差異の一致率:88%)。
一方で、PICOTの特定要素を保険請求データから模倣できなかったRCT(16件)との比較分析では、一致率が低かった(ピアソン相関係数:0.53[95%CI:0.00~0.83]、統計学的有意性の一致率:56%、推定値の一致率:50%、標準化差異の一致率:69%)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)