これまで、高用量治療の適応とならない多発性骨髄腫に罹患した患者の標準治療はメルファラン+プレドニゾン(MP)療法であったが、08年6月に米国FDAは新たに、再発多発性骨髄腫やマントル細胞リンパ腫の治療剤として使用されていたボルテゾミブ(国内販売名:ベルケイド)を多発性骨髄腫の第一選択薬として承認した。本稿は、サラマンカ大学病院(スペイン)のJesus F. San Miguel 氏らによる第III相臨床試験の結果。NEJM誌2008年8月28日号に掲載された。
MP療法群とボルテゾミブ併用群にランダム割り付け
試験は、多発性骨髄腫の患者で未治療の682例を、標準治療であるMP単独療法群(メルファラン9mg/m2体表面積、プレドニゾン60mg/m2体表面積)と、MP+ボルテゾミブ(1.3mg/m2体表面積)の併用療法群にランダムに割り付け行われた。
試験期間はMP療法での標準治療期間である6週間を1サイクルとする9サイクルとし、1~4サイクルは1、4、8、11、22、25、29、32日目に、5~9サイクルは1、8、22、29日目に投与した。
第一エンドポイントは無増悪期間とした。
無増悪期間、完全寛解率ともボルテゾミブ併用群で著効
試験の結果、MP+ボルテゾミブ併用群(ボルテゾミブ群)の無増悪期間は24.0ヵ月であったのに対し、MP単独群(対照群)は16.6ヵ月だった(ボルテゾミブ群のハザード比:0.48、P<0.001)。部分寛解あるいはそれ以上を示した患者の割合は、ボルテゾミブ群71%、対照群35%で、完全寛解率はそれぞれ30%と4%であった(P<0.001)。奏効期間の中央値は、ボルテゾミブ群が19.9ヵ月、対照群は13.1ヵ月。全生存に対するハザード比はボルテゾミブ群で0.61だった(P = 0.008)。
併用投与に関連する有害事象は、すでに確立されている毒性イベントのプロファイルと一致した。グレード3のイベントは、ボルテゾミブ群で対照群より高い確立で発生した(53%対44%、P = 0.02)。しかし、グレード4のイベント(それぞれ28%対27%)、治療関連の死亡(1%と2%)には有意差がみられなかった。
これらから研究グループは、新たに骨髄腫と診断され、高用量治療の適応外とされた患者には、MP単独療法よりボルテゾミブとの併用療法のほうが優れていると結論している。
(武藤まき:医療ライター)