1型糖尿病の成人患者において、週1回投与のinsulin icodec(icodec)は26週時の糖化ヘモグロビン値(HbA1c)低下に関して、1日1回投与のインスリン デグルデクに対し非劣性であることが認められたが、臨床的に重大な低血糖または重症低血糖の合併が有意に高率であった。英国・Royal Surrey Foundation TrustのDavid Russell-Jones氏らが、12ヵ国の99施設で実施された52週間の無作為化非盲検第IIIa相試験「ONWARDS 6試験」の結果を報告した。著者は、「1型糖尿病の特性を考慮すると、基礎インスリン注射を毎日から週1回に変更することは困難な可能性があるが、持続血糖モニタリングのデータとリアルワールド研究のさらなる解析により、icodec週1回投与の低血糖リスク軽減のための投与量調節に関する洞察が得られる可能性はある」とまとめている。Lancet誌2023年10月17日号掲載の報告。
1型糖尿病患者約600例を無作為化
研究グループは、インスリン治療歴が1年以上でHbA1c値が10.0%未満の1型糖尿病成人患者を、icodec週1回皮下投与群(icodec群)またはインスリン デグルデク1日1回皮下投与群(デグルデク群)に、1対1の割合に無作為に割り付けた。両群とも、インスリン アスパルト(1日2回以上、食直前皮下投与)との併用下で、52週間(icodecの最終投与は51週目)投与した。なお、本試験は、スクリーニング期間2週間、治療期間52週間(主要評価期間26週間、安全性延長期間26週間)、追跡期間5週間で構成された。
主要エンドポイントは、26週時におけるベースラインからのHbA1cの変化量で、無作為化されたすべての患者を解析対象とし、非劣性マージンを両群の差の95%信頼区間(CI)の上限が0.3%未満とした。
2021年4月30日~10月15日に655例がスクリーニングされ、このうち582例がicodec群(290例)またはデグルデク群(292例)に割り付けられた。全例が1回以上試験薬の投与を受け、有効性および安全性の解析対象集団となった。
26週時点で血糖コントロール改善は同等だが、臨床的に重大な低血糖はicodecで多い
icodec群およびデグルデク群のHbA1c値は、ベースラインでそれぞれ7.59%、7.63%から、26週時には推定平均変化量として0.47%、0.51%低下した。推定平均変化量の群間差は0.05%(95%CI:-0.13~0.23)であり、icodec群のデグルデク群に対する非劣性が確認された(p=0.0065)。
ベースラインから26週時までの臨床的に重大な低血糖(54mg/dL未満)または重症低血糖の発生頻度は、icodec群19.9件/人年、デグルデク群10.4件/人年で、icodec群が統計学的に有意に高かった(推定率比:1.9、95%CI:1.5~2.3、p<0.0001)。57週時の評価においても、icodec群ではデグルデク群と比較し臨床的に重大な低血糖または重症低血糖の発生頻度が統計学的に有意に高かった(17.0件/人年vs. 9.2件/人年、推定率比:1.8、95%CI:1.5~2.2、p<0.0001)。
重篤な有害事象は、icodec群で24例(8%)に39件、デグルデク群で20例(7%)に25件報告された。icodec群で頭蓋内出血による死亡が1例認められたが、icodecとの関連性は低いと判断された。
(ケアネット)