滑膜炎を伴う手指変形性関節症、MTXは有効か/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2023/11/01

 

 滑膜炎を伴う手指変形性関節症の治療において、メトトレキサート20mgの6ヵ月間の投与により、中等度ではあるが臨床的に意義を持つ可能性のある疼痛軽減効果を認めたことが、オーストラリア・モナシュ大学のYuanyuan Wang氏らが実施したMETHODS試験で示された。これにより、メトトレキサートは炎症を伴う手指変形性関節症の管理に有用との仮説が証明されたことになるという。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年10月12日号で報告された。

オーストラリア4市の無作為化プラセボ対照試験

 METHODS試験は、オーストラリアの4市(メルボルン、ホバート、アデレード、パース)の施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照試験であり、2017年11月~2021年11月に患者の登録を行った(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]の助成を受けた)。

 年齢40~75歳、手指変形性関節症(1つ以上の関節がKellgren-Lawrence分類のGrade2以上)と診断され、MRIでGrade1以上の滑膜炎を認めた患者を、メトトレキサート20mgまたはプラセボを週1回6ヵ月間経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。

 主要アウトカムは、ITT集団における6ヵ月の時点での疼痛軽減(100mm視覚的アナログスケール[VAS]で評価)であった。

 97例を登録し、メトトレキサート群に50例、プラセボ群に47例を割り付けた。全体の平均年齢は61.4(SD 6.7)歳で、68例(70%)が女性であった。ベースラインの患者背景因子は、平均BMI値がメトトレキサート群で高かった点(29.7[SD 5.0]vs.27.9[5.0])を除き、全般に両群間でバランスが取れていた。

AUSCANの疼痛およびこわばりも有意に改善

 主要アウトカムのデータは、メトトレキサート群の84%、プラセボ群の85%から得た。6ヵ月時のVASによる疼痛の平均変化量は、プラセボ群が-7.7mm(SD 25.3)であったのに対し、メトトレキサート群は-15.2mm(SD 24.0)と有意に改善し(補正後平均群間差:-9.9mm、95%信頼区間[CI]:-19.3~-0.6、p=0.037)、効果量(標準化平均群間差)は0.45(95%CI:0.03~0.87)であった。

 6ヵ月時のオーストラリア・カナダ手指変形性関節症指数(AUSCAN)の疼痛(補正後平均群間差:-47.0、95%CI:-91.5~-2.5、p=0.038)およびこわばり(-11.4、-20.8~-2.0、p=0.018)の平均値の改善はメトトレキサート群で有意に優れたが、AUSCANの機能(-52.7、-127.3~21.9、p=0.17)、手指変形性関節症機能指数(FIHOA)(-0.9、-3.4~1.7、p=0.50)、健康評価質問票(HAQ)(-0.0、-0.2~0.2、p=0.89)、ミシガン手指転帰質問票(MHQ)(5.5、-0.3~11.3、p=0.065)、握力(2.6、-0.8~6.1、p=0.13)には、両群間に有意な差を認めなかった。

 VASによる疼痛の平均変化量の両群間の差は、4週の時点では臨床的に意義のあるものではなかった。また、AUSCANの疼痛およびこわばりは、3ヵ月時にはメトトレキサート群で改善度が高かったが、臨床的な意義は認めなかった。

 有害事象は、メトトレキサート群の31例(62%)、プラセボ群の28例(60%)で発現した。重篤な有害事象はそれぞれ3例(6%)および1例(2%)で認められ、治療関連と判定されたものはなかったが投与の一時的な中断を招き、メトトレキサート群の1例(上腕骨骨折で手術)は試験から脱落した。試験薬関連の可能性があると判定された有害事象は、メトトレキサート群で39件、プラセボ群で49件発生し、それぞれ5例および4例が投与中止に至った。

 著者は、「メトトレキサート20mgの週1回投与の効果が、6ヵ月以降も持続するか否か、また手指変形性関節症と滑膜炎を有する患者の構造的アウトカムを長期にわたって改善するか否かを確認するために、さらなる試験を行う必要がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)