早期アルツハイマー病患者において、完全ヒトモノクローナルIgG1抗体のgantenerumabは116週時点のアミロイド負荷をプラセボより減少させたものの、臨床症状の悪化を抑制しなかった。米国・ワシントン大学のRandall J. Bateman氏らGantenerumab Study Groupが、30ヵ国288施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較第III相試験「GRADUATE I試験」および「GRADUATE II試験」(それぞれ15ヵ国156施設、18ヵ国152施設)の結果を報告した。アミロイドβ(Aβ)を標的とするモノクローナル抗体は、早期アルツハイマー病患者の認知機能や身体機能の低下を遅らせる可能性がある。gantenerumabは、Aβの凝集体に対して高い親和性を有しており、皮下投与のアルツハイマー病治療薬として開発が進められていた。NEJM誌2023年11月16日号掲載の報告。
116週後の臨床認知症評価尺度6項目合計スコア(CDR-SB)を評価
研究グループは、陽電子放射断層撮影(PET)または脳脊髄液(CSF)検査でアミロイド斑が認められ、臨床認知症評価尺度(CDR)の全般的スコア(CDR-GS、範囲:0~3、スコアが高いほど認知障害が高度)が0.5または1、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが22以上(範囲:0~30、スコアが低いほど認知障害が高度)などのアルツハイマー病による軽度認知障害または軽度アルツハイマー型認知症を有する50~90歳の患者を登録し、gantenerumab群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。
投与量は120mg(4週ごと、3回)より開始し、255mg(4週ごと、3回)、510mg(4週ごと、3回)と漸増した後、510mgを2週ごとに皮下投与した。
主要アウトカムは、116週時点のCDR6項目合計スコア(CDR-SB、範囲:0~18、スコアが高いほど認知障害が高度)のベースラインからの変化量であった。
CDR-SBのベースラインからの変化量に有意差なし
GRADUATE I試験に985例、II試験に980例が登録された。ベースラインのCDR-SBスコアは、それぞれ3.7、3.6であった。
116週時点のCDR-SBスコアのベースラインからの変化量は、GRADUATE I試験ではgantenerumab群3.35、プラセボ群3.65であり(群間差:-0.31、95%信頼区間[CI]:-0.66~0.05、p=0.10)、II試験ではそれぞれ2.82、3.01であった(-0.19、-0.55~0.17、p=0.30)。
116週時点の脳アミロイドPET画像におけるアミロイドのgantenerumab群とプラセボ群の差は、GRADUATE I試験では-66.44センチロイド、II試験では-56.46センチロイドであり、gantenerumab群でのアミロイド陰性状態の患者の割合はGRADUATE I試験で28.0%、II試験で26.8%であった。また2試験のいずれにおいても、gantenerumab群がプラセボ群と比較してCSF中のリン酸化タウ181濃度が低く、Aβ42濃度が高かったが、PETでのタウ凝集蓄積は両群で同程度であった。
浮腫を伴うアミロイド関連画像異常(ARIA-E)は、gantenerumab群で24.9%に認められ、症候性ARIA-Eの発現率は5.0%であった。プラセボ群はそれぞれ2.7%、0.2%だった。
(ケアネット)