CLLの1次治療、MRDに基づくアプローチが有望/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2023/12/29

 

 未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)の治療において、測定可能残存病変(measurable residual disease:MRD)に基づいて投与期間を最適化するイブルチニブ(ブルトン型チロシンキナーゼ[BTK]阻害薬)+ベネトクラクス(BCL-2阻害薬)療法はフルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブ(FCR)療法と比較して、無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し全生存期間(OS)も良好で、感染症のリスクは同程度であるものの心臓の重度有害事象の頻度が高かったことが、英国・Leeds Cancer CentreのTalha Munir氏らが実施した「FLAIR試験」の中間解析で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年12月10日号で報告された。

英国の無作為化第III相試験

 FLAIR試験は、英国の96の病院が参加した非盲検無作為化対照比較第III相試験であり、2017年7月~2021年3月に患者の無作為化を行った(Cancer Research UKなどの助成を受けた)。

 未治療のCLLまたは小リンパ球性リンパ腫(SLL)で、FCRの適応と判定された患者を1対1対1の割合でイブルチニブ群、イブルチニブ+ベネトクラクス群、FCR群に割り付けた。本中間解析では、イブルチニブ+ベネトクラクス群およびFCR群の523例(年齢中央値62歳[四分位範囲[IQR]:56~67]、男性71.3%、イブルチニブ+ベネトクラクス群260例、FCR群263例)の結果を解析した。

 イブルチニブ+ベネトクラクス群では、イブルチニブを単剤で2ヵ月間、1日1回経口投与したのち、ベネトクラクスを加えた併用投与を、アルゴリズムによるMRDに基づく中止基準を満たすか、病勢進行または許容できない毒性作用の発現に至るまで、最長で6年間実施した。FCRは、1サイクルを28日として6サイクル投与した。

 主要評価項目はPFS、副次評価項目はOS、奏効率、MRD陰性の割合、安全性などとした。
 

3年無増悪生存率:97.2% vs.76.8%

 追跡期間中央値43.7ヵ月の時点で、病勢進行または死亡した患者は、イブルチニブ+ベネトクラクス群が12例(4.6%)、FCR群は75例(28.5%)であり、3年無増悪生存率はそれぞれ97.2%および76.8%であった。

 両群ともPFS中央値には未到達であったが、病勢進行または死亡のハザード比(HR)は0.13(95%信頼区間[CI]:0.07~0.24)とイブルチニブ+ベネトクラクス群で有意に優れた(p<0.001)。また、免疫グロブリン重鎖可変部遺伝子(IGHV)変異陰性例ではイブルチニブ+ベネトクラクス群でPFS中央値が良好であった(HR:0.07、95%CI:0.02~0.19)が、陽性例ではこのような効果を認めなかった(0.54、0.21~1.38)。

 OS中央値についても、両群とも未到達であったが、死亡のHRは0.31(95%CI:0.15~0.67)とイブルチニブ+ベネトクラクス群で良好であった。また、IGHV変異陰性例ではイブルチニブ+ベネトクラクス群でOS中央値が良好であった(HR:0.23、95%CI:0.06~0.81)が、陽性例ではこのような差はみられなかった(0.61、0.20~1.82)。

 9ヵ月時の全奏効率は、イブルチニブ+ベネトクラクス群が86.5%(225/260例)、FCR群は76.4%(201/263例)であり(補正後オッズ比[OR]:2.00、95%CI:1.26~3.16)、完全奏効率はそれぞれ59.2%(154例)および49.0%(129例)だった(1.51、1.07~2.14)。

MRDに基づくアプローチで3年時までに58.0%が投与を中止

 3年時までに、イブルチニブ+ベネトクラクス群で、MRD陰性となったために投与を中止した患者の割合は58.0%であった。同群では、5年時に65.9%で骨髄中のMRDが、92.7%で末梢血中のMRDが検出不能であった。また、9ヵ月時に骨髄中のMRD陰性であった患者の割合は、イブルチニブ+ベネトクラクス群が41.5%、FCR群は48.3%だった。

 1年以内に発生したGrade3~5の有害事象のうち頻度が最も高かったのは、好中球数減少(イブルチニブ+ベネトクラクス群10.3% vs.FCR群47.3%)、貧血(0.8% vs.15.5%)、血小板減少症(2.0% vs.10.0%)であった。感染症のリスクは両群でほぼ同様であったが、心臓の重度有害事象の割合はイブルチニブ+ベネトクラクス群で高かった(10.7% vs.0.4%)。死亡はイブルチニブ+ベネトクラクス群で8例、FCR群で23例に認め、それぞれ1例および6例が治療関連死の可能性があると判定された。

 著者は、「末梢血においてMRD陰性となるまでプラトーはみられず、これはMRDに基づく治療の継続が正当であることを示唆する」としている。

(医学ライター 菅野 守)