乳がん検診で異型を伴う病変が検出された場合、その後の短期間において、マンモグラフィ検査を毎年行うことは有益ではないことが、英国・ウォーリック大学のKaroline Freeman氏らによる検討で示された。悪性か否かが不明の異型を伴う乳房病変が検出された場合、乳がんの長期リスクが3~4倍増加する可能性が示されている。英国、欧州、米国のガイドラインでは、異型部位を吸引式乳房組織生検(VAB)または手術で切除し、画像サーベイランスを行うことが推奨されている。しかし、画像サーベイランスを5年間にわたり毎年行うことについてはエビデンスがなく、期間、頻度、妥当性が議論の的となっていた。なお、今回の結果について著者は、「長期的リスクについてさらなるエビデンスが必要である」と述べている。BMJ誌2024年2月1日号掲載の報告。
上皮異型が診断された女性3,238例のその後の乳がん例数・種類を調査
研究グループは、検診での異型検出後の乳がん発症例数と種類について調べるため、英国で3年に1回の検診での検出が予測される例数(女性1,000人当たり11.3例)と比較した。
イングランドのSloane Atypia Projectの前向きコホートを対象とした観察研究を実施した。同コホートには、英国の国民保健サービス(NHS)乳がん検診プログラムで診断された異型が含まれており、English Cancer RegistryおよびMortality and Birth Information Systemとリンクしていることから、その後の乳がんおよび死亡に関する情報を得ることができる。
解析には、2003年4月1日~2018年6月30日に上皮異型と診断された女性3,238例が含まれた。
主要アウトカムは、異型診断後1年、3年、6年後に検出された浸潤性乳がんの例数と種類で、異型の種類、年齢、診断暦年別に解析した。
マンモと生検の技術的変化で、異型のリスク特定が可能に?
異型検出は、2010年の119例から、デジタルマンモグラフィ導入後の2015年には502例と4倍に増加していた。
2018年12月までの追跡期間中(異型診断後の1万9,088人年)に、女性141例が乳がんを発症した。異型が検出された女性1,000人当たりの浸潤性乳がんの累積発症率は、異型検出後1年時点で0.95(95%信頼区間[CI]:0.28~2.69)、3年時点で14.2(10.3~19.1)、6年時点で45.0(36.3~55.1)だった。異型検出がより直近の時期だった女性ほど、その後3年以内にがんが検出された割合は低かった。
浸潤性乳がん検出(女性1,000人当たり)は、2013~18年は6.0(95%CI:3.1~10.9)であったのに対し、2003~07年は24.3(13.7~40.1)、2008~12年は24.6(14.9~38.3)だった。浸潤性乳がんのグレード、大きさ、リンパ節転移は、一般の検診集団で検出されたがんと同等(同側および対側がんの例数も同等)だった。
結果を踏まえて著者は、「多くの異型はリスク因子ではあるが、短期的には、手術が必要となる浸潤性乳がんの前兆ではないと思われた」とし、「異型検出がより直近の女性ほど、その後にがんが検出される割合が低かったのは、過剰診断に相当する可能性が高い異型を検出するマンモグラフィや生検の技術的変化と関連していると思われる」と述べている。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)