新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)へ感染し、症状が消失・回復しても、症状の持続期間にかかわらず軽度の認知機能障害が認められた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAdam Hampshire氏らが、オンライン評価による大規模コミュニティのサンプル調査(14万例超)の結果を報告した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後の認知機能障害はよく知られているが、客観的に測定可能な認知機能障害が存在するか、またどのくらいの期間持続するかは不明だった。NEJM誌2024年2月29日号掲載の報告。
イングランドの成人を対象に認知機能のオンライン評価を実施
研究グループは、イングランドの試験に参加した成人80万例に対し、認知機能のオンライン評価の実施を依頼し、8タスクの全般的認知機能スコアを推定した。
感染発症後に12週間以上持続する症状を有した患者は、客観的に測定可能な全般的認知機能障害があり、とくに直近の記憶力低下または思考や集中困難(ブレインフォグ)を報告した患者では、実行機能と記憶の障害が観察されるだろうと仮説を立て、検証した。
起源株感染者は、変異株感染者より認知機能障害の程度が大きい
オンライン認知機能評価を開始した14万1,583例のうち、11万2,964例が評価を完了した。重回帰分析の結果、COVID-19症状が4週間未満で消失・回復した患者や12週以上症状が持続するも消失・回復した患者は、非COVID-19群(SARS-CoV-2に非感染または感染が不確定)と比較し、同程度に軽度の全般的認知機能障害を有していた(それぞれ、-0.23 SD[95%信頼区間[CI]:-0.33~-0.13]、-0.24 SD[-0.36~-0.12])。
一方、12週以上症状が持続し、認知機能評価時点においても消失していなかった患者は、非COVID-19群と比較し、認知機能障害の程度が大きかった(-0.42 SD、95%CI:-0.53~-0.31)。
起源株やB.1.1.7変異株が優勢の期間にSARS-CoV-2に感染した患者は、その後の変異株感染者より認知機能障害の程度が大きかった(たとえばB.1.1.7変異株vs.B.1.1.529変異株:-0.17 SD、95%CI:-0.20~-0.13)。また、入院した患者のほうが、入院しなかった患者より認知機能障害の程度が大きかった(たとえばICU入院患者:-0.35 SD、95%CI:-0.49~-0.20)。
解析結果は傾向スコアマッチング解析を実施しても同様だった。症状が持続する患者は非COVID-19群に比べて、記憶、推理、実行機能のタスクで障害が大きく(-0.33~-0.20 SD)、これらのタスクは、記憶力低下、ブレインフォグなどの最近の症状と弱い相関が認められた。
今回の結果を踏まえて著者は、「認知機能障害の長期的な持続の有無および臨床的影響は、依然として不明である」と述べている。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)