高用量プロゲストーゲン(nomegestrol acetate、クロルマジノン、cyproterone acetate)は、頭蓋内髄膜腫のリスク因子として知られているが、他の多くのプロゲストーゲンのリスクの評価はなされていなかった。French National HealthのNoemie Roland氏らは、今回、新たにmedrogestone、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、promegestoneの長期使用が髄膜腫の過剰なリスクと関連し、プロゲステロン、ジドロゲステロン、子宮内レボノルゲストレル放出システムにはリスクの上昇はみられず安全であることを示した。研究の成果は、BMJ誌2024年3月27日号に掲載された。
フランス在住女性の症例対照研究
研究グループは、フランスにおける8種のプロゲストーゲンの使用に関連した頭蓋内髄膜腫のリスクを評価する目的で、全国的な症例対照研究を行った(French National Health Insurance Fund[Cnam]などの助成を受けた)。
症例は、2009年1月1日~2018年12月31日に髄膜腫に対する頭蓋内手術を受けたフランス在住の女性1万8,061例であった。各症例と出生年および居住地域をマッチさせた女性5例ずつを対照とした(合計9万305例)。
全体の平均年齢は57.6(SD 12.8)歳、最も多い年齢層は45~54歳(26.7%)で、次いで55~64歳(26.4%)、65~74歳(21.5%)の順であった。
短期使用では差がない
medrogestone(5mg、経口薬)の現使用者は、非使用者に比べ髄膜腫の発生率が高かった(症例群0.2% vs.対照群0.1%、オッズ比[OR]:3.49、95%信頼区間[CI]:2.38~5.10)。また、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(150mg、注射薬)(0.05% vs.0.01%、5.55、2.27~13.56)、およびpromegestone(0.125/0.5mg、経口薬)(0.5% vs.0.2%、2.39、1.85~3.09)の現使用者も、髄膜腫のリスクが増加していた。
これら3剤による髄膜腫のリスク上昇は、いずれも長期(1年以上)の使用によるものであり、短期使用では両群に差を認めなかった。
一方、プロゲステロン(皮下)(症例群0.5% vs.対照群0.6%、OR:1.11、95%CI:0.89~1.40)、ジドロゲステロン(0.9% vs.1.1%、0.96、0.81~1.14)、子宮内レボノルゲストレル放出システム(52mg:3.7% vs.5.1%[OR:0.94、95%CI:0.86~1.04]、13.5mg:0.2% vs.0.2%[1.39、0.70~2.77])の3剤については、髄膜腫のリスク上昇はないことを確認した。
陽性対照の3剤は高度なリスク上昇
ジエノゲストとヒドロキシプロゲステロンは、これらの投与を受けた人数が少なかったため、結論は得られなかった。
陽性対照としたcyproterone acetate(症例群4.9% vs.対照群 0.3%、OR:19.21、95%CI:16.61~22.22)、nomegestrol acetate(5.1% vs.1.2%、4.93、4.50~5.41)、酢酸クロルマジノン(3.5% vs.1.0%、3.87、3.48~4.30)は、いずれも髄膜腫の高度なリスク上昇を示した。
著者は、「とくに、広く使用されている避妊薬であるメドロキシプロゲステロン酢酸エステル注射薬の使用に関連したリスクの増加と、子宮内レボノルゲストレル放出システムの安全性を確認したことは、重要な新知見である」としている。
(医学ライター 菅野 守)