症候性大動脈弁逆流症に対するTAVI、新たなデバイスが有望/Lancet

高リスクの症候性大動脈弁逆流を呈する患者に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)において、大動脈弁逆流に関するTAVIの課題に対処するために特別に設計されたトリロジー経カテーテル心臓弁(JenaValve Trilogy heart valve system、米国・JenaValve Technology製)は、大動脈弁逆流の改善に有効で、合併症も少なく、1年後の全死因死亡率が良好であることが、米国・コロンビア大学アービング医療センターのTorsten P. Vahl氏らが実施した「ALIGN-AR試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年3月26日号で報告された。
米国20施設の前向き単群試験
ALIGN-AR試験は、米国の20施設で実施した前向き多施設共同単群試験であり、2018年6月~2022年8月に参加者のスクリーニングを行った(米国・JenaValve Technologyの助成を受けた)。年齢18歳以上、中等度~高度または高度の大動脈弁逆流症を呈し、外科的大動脈弁置換術で死亡または合併症の発生の可能性が高いと考えられる高リスクの患者180例(平均年齢75.5[SD 10.8]歳、女性47%)を登録し、経大腿アプローチによるトリロジー経カテーテル心臓弁の留置術を行った。
安全性の主要複合エンドポイント(30日後の全死因死亡、あらゆる脳卒中、大出血、急性腎障害[ステージ2~3]、大血管合併症、デバイス関連の手術または介入、新規のペースメーカー植込み術など)は、事前に規定された達成目標40.5%に対する非劣性とした。有効性の主要エンドポイントは1年後の全死因死亡で、達成目標を25%として非劣性を評価した。
2つの主要エンドポイントの双方を達成
171例(95%)で技術的成功を達成した。30日後までに、4例(2%)が死亡し、2例(1%)で後遺障害を伴う脳卒中が、2例(1%)で後遺障害を伴わない脳卒中が発生した。Valve Academic Research Consortium-2の標準的な定義を用いると、安全性に関するイベントは48例(27%、97.5%信頼区間[CI]:19.2~34.0)で発生し、安全性の主要複合エンドポイントを達成した(非劣性のp<0.0001)。新規ペースメーカー植込み術は、すでに装着済みの30例を除く150例中36例(24%)に行った。
1年後までに死亡したのは180例中14例(7.8%、97.5%CI:3.3~12.3)であり、有効性の主要エンドポイントを達成した(非劣性のp<0.0001)。
KCCQ、6分間歩行試験も改善
30日後のNYHA心機能分類クラス別の患者数は、180例中クラスIが91例(51%)、クラスIIが62例(34%)、クラスIIIが17例(9%)であり、1年後はクラスIが90例(50%)、クラスIIが48例(27%)だった。125例(83%)が、少なくとも1段階の改善を達成した。カンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)の総合要約スコアの平均値は、ベースラインの55.3点から1年後には77.6点に改善した(p<0.0001)。また、6分間歩行試験の距離は、ベースラインの262.7mから、6ヵ月後には308.1m、1年後には312.5mへと改善し(p=0.004)、1年後の時点で62例(48%)が15m以上の延長を達成した。
著者は、「経大腿TAVIは大動脈弁狭窄症の確立された治療法であるが、大動脈弁逆流症に対する既存の経カテーテル心臓弁デバイスの使用は、大動脈弁輪部への弁の固定や人工弁周囲逆流との関連で困難である。今回使用した新たな経カテーテル心臓弁は、これらの解剖学的課題をほぼ克服できることが示された」としている。
(医学ライター 菅野 守)
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