手術リスクが低~中等度の症候性重症大動脈弁狭窄症患者において、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は外科的大動脈弁置換術(SAVR)に対して、1年時の全死因死亡または脳卒中の複合アウトカムに関して非劣性であることが示された。ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのStefan Blankenberg氏らが、同国の38施設で実施した医師主導の無作為化非劣性試験「DEDICATE-DZHK6試験」の結果を報告した。TAVIとSAVRの両方が適応となる手術リスクが低い症候性重症大動脈弁狭窄症患者では、日常診療における適切な治療戦略に関するデータが不足していた。NEJM誌オンライン版2024年4月8日号掲載の報告。
1,414例を無作為化、1年時の死亡・致死的/非致死的脳卒中の複合を比較
研究グループは、65歳以上の症候性重症大動脈弁狭窄症で、各施設の学際的なハートチームの臨床評価に基づく手術リスクが低~中等度、かつTAVIまたはSAVRの両方に適格であると判断された患者を、TAVI群またはSAVR群に1対1の割合で無作為に割り付けた。
TAVIでは経大腿動脈アクセスが推奨されたが、代替アクセスも可能であった。また、SAVRでは、術者の裁量で外科的アクセス(胸骨切開または低侵襲アプローチ)が選択された。
主要アウトカムは、1年時の全死因死亡、致死的または非致死的脳卒中の複合とし、ITT解析を行った。
2017年5月~2022年9月に計1,414例が無作為化された(TAVI群701例、SAVR群713例)。患者の平均(±SD)年齢は74±4歳で、男性が790例(57%)、米国胸部外科医学会予測死亡リスク(STS-PROM)スコア中央値は1.8%(外科的低リスク)であった。
1年時の主要アウトカム、TAVIはSAVRに対して非劣性
主要アウトカムである1年時の複合イベントの発生率(Kaplan-Meier推定値)は、TAVI群5.4%、SAVR群10.0%であり、死亡または脳卒中のハザード比(HR)は0.53(95%信頼区間[CI]:0.35~0.79、非劣性のp<0.001)であった。
副次アウトカムについては、全死因死亡の発生率がTAVI群2.6%、SAVR群6.2%(HR:0.43、95%CI:0.24~0.73)、脳卒中の発生率がそれぞれ2.9%、4.7%(0.61、0.35~1.06)であった。
治療直後処置合併症は、TAVI群で1.5%、SAVR群で1.0%にみられた。大出血または生命を脅かす出血の発生率はそれぞれ4.3%、17.2%であった(HR:0.24、95%CI:0.16~0.35)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)