手術リスクの低い症候性重症大動脈弁狭窄症患者を対象に、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)と外科的大動脈弁置換術を比較した「PARTNER 3試験」の5年追跡解析の結果、全死因死亡、脳卒中および再入院の複合エンドポイントを含む2つの主要エンドポイントについて、いずれも両群に有意差は認められなかったことが示された。米国・Baylor Scott and White HealthのMichael J. Mack氏らが報告した。本試験では、1年時の死亡、脳卒中、再入院の複合エンドポイントの発生率はTAVRのほうが有意に低いことが示されていたが、長期的な予後については不明であった。NEJM誌オンライン版2023年10月24日号掲載の報告。
2つの主要複合エンドポイントを評価
研究グループは、症候性大動脈弁狭窄症を有し、米国胸部外科医学会の予測死亡リスク(STS-PROM)スコア(範囲:0~100%、スコアが高いほど術後30日以内の死亡リスクが高い)が4%未満で、臨床的・解剖学的評価に基づき手術リスクが低いと判断された患者1,000例を、経大腿動脈アプローチでバルーン拡張型人工弁(SAPIEN 3)を留置するTAVR群(503例)、または外科的大動脈弁置換術を行う手術群(497例)に、1対1の割合に無作為に割り付け、臨床アウトカムおよび経胸壁心エコーデータを、ベースライン、植込み手技後、退院時、30日後、6ヵ月後、1年後、以降5年後まで毎年評価した。
5年解析時の第1主要エンドポイントは、全死因死亡、脳卒中、手技・弁・心不全に関連した再入院の非階層的複合エンドポイントで、Wald検定を用いてTAVR群の手術群に対する優越性を検討した。また、第2主要エンドポイントとして、全死因死亡、後遺症のある脳卒中、後遺症のない脳卒中、再入院日数の階層的複合エンドポイントを事前に設定し、win比を用いて解析した。
TAVRと外科的大動脈弁置換術で、2つの主要エンドポイントに差はなし
無作為化された1,000例のうち、割り付けられた手技が開始されたas-treated集団計950例(TAVR群496例、手術群454例)が解析対象集団となった。
第1主要エンドポイントのイベントは、TAVR群111例、手術群117例に認められ、発生率(Kaplan-Meier推定値)はそれぞれ22.8%、27.2%(群間差:-4.3%、95%信頼区間[CI]:-9.9~1.3、p=0.07)であり、第2主要エンドポイントのwin比は1.17(95%CI:0.90~1.51、p=0.25)であった。第1主要エンドポイントの各構成要素の発生率(Kaplan-Meier推定値)は、全死因死亡がTAVR群10.0%、手術群8.2%、脳卒中がそれぞれ5.8%、6.4%、再入院が13.7%、17.4%であった。
5年時の弁血行動態は両群で類似しており、平均大動脈弁圧較差(平均±SD)はTAVR群12.8±6.5mmHg、手術群11.7±5.6mmHgであった。生体弁機能不全は、TAVR群で3.3%、手術群で3.8%に認められた。
(医学ライター 吉尾 幸恵)