膝のMRI画像診断は、原因不明の膝症状がある患者にしばしば行われる。そして半月板損傷が見つかると普通、症状はそれらに起因するものとされるが、半月板損傷の有病率と、膝症状やX線撮影の所見に基づく変形性膝関節症を伴う半月板断裂との関連については十分なデータが示されていない。米国・ボストン医科大学のMartin Englund氏らは、マサチューセッツ州住民を対象にその関連について調査を行った。NEJM誌2008年9月11日号より。
被験者を50歳以上の一般集団からランダムに選定
Englund氏らが対象としたのは、マサチューセッツ州フラミンガムの住民で国勢調査標準地域データとRDD方式(電話番号からランダムに抽出)で被験者を選んだ。50~90歳の外来通院可能な者とし、特に膝または他の関節に問題のある対象を選択したわけではない。
分析は、被験者991例(57%が女性)を対象に、1.5テスラMRIの走査で得た右膝半月板の画像データで健全性を評価することで行われた。右膝の症状は調査票に基づいて評価した。
膝症状がなくても半月板所見は加齢に伴い増加
その結果、右膝半月板断裂または半月板損傷の有病率は、女性50~59歳で19%(95%信頼区間:15~24)、男性は70~90歳で56%(95%CI 46~66)と大きな幅があり、男女とも加齢に伴いその数が増すことが認められた。そして膝手術を受けた履歴のある被験者を除外しても、有病率は大幅に低下することはなかった。
変形性膝関節症のX線所見のある人(Kellgren Lawrence分類で、グレード0~4のうちグレード2以上。数値が高いほど変形性膝関節症のより確かな徴候を示す)の半月板断裂の有病率は、ほとんど毎日膝痛、うずき、こわばりを感じる人で63%、一方、これらの症状のない人でも60%だった。
変形性膝関節症のX線所見のない人の有病率は、膝痛などの症状がある人で32%、ない人で23%となっている。
また、本調査では、半月板断裂が認められた被験者の61%は、前月には疼痛やうずき、こわばりは少しもなかったと報告されている。
これらからEnglund氏は、「今回の調査結果は、半月板損傷は中高年に一般的にみられるもので、膝症状とは関連せず、変形性膝関節症に伴うこともあるものであることを示す。膝MRI検査をオーダーした医師は、付帯的な損傷を考慮し、治療プランを考えなければならない」と結論している。
(武藤まき:医療ライター)