非腫瘍性慢性疾患の治療薬に関して、米国食品医薬品局(FDA)の承認を裏付ける臨床試験の主要エンドポイントとして使用された代替マーカー(サロゲートマーカー)の半数以上が、この代替マーカーを用いて評価した治療効果と臨床アウトカムとの関連を検討したメタ解析が公表されておらず、少なくとも1つのメタ解析を確認したサロゲートマーカーも、その多くが臨床アウトカムとの関連について高い強度のエビデンスを欠いていることが、米国・エモリー大学のJoshua D. Wallach氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年4月22日号で報告された。
代替マーカーを用いた臨床試験のメタ解析を系統的に要約
研究グループは、非腫瘍性慢性疾患の治療薬に関して、代替マーカーを用いて評価した治療効果と臨床アウトカムとの関連性の強さを検討した臨床試験のメタ解析(メタ解析、系統的レビューとメタ解析、統合解析)から得られたエビデンスの要約を目的に系統的レビューを行った(Arnold Ventures to the Yale Collaboration for Regulatory Rigor, Integrity, and Transparency[CRRIT]の助成を受けた)。
解析には、FDAの成人代替エンドポイント表(FDA Adult Surrogate Endpoint Table)に掲載され、2023年3月19日の時点でMEDLINEに登録されていた文献から得た32の固有の非腫瘍性慢性疾患の臨床試験で、主要エンドポイントとして使用されていた37の代替マーカーのデータを用いた。
これらの慢性疾患と代替マーカーの組み合わせには、たとえばアルツハイマー病におけるアミロイドβ、喘息における呼気1秒量(FEV
1)、慢性腎臓病(CKD)における血清クレアチニン値、HIV-1における血清HIV抗体などが含まれた。
59%で、代替マーカーで評価した効果とアウトカムの関連を検討したメタ解析がない
21の慢性疾患の22(59%)の代替マーカーについては、適格なメタ解析が同定できなかった。一方、14の慢性疾患の15(41%)の代替マーカーについては、少なくとも1つのメタ解析を特定した。メタ解析の総数は54件で、1つの代替マーカー当たりのメタ解析数の中央値は2.5件(四分位範囲[IQR]:1.3~6.0)だった。
また、1つのメタ解析に含まれた試験数中央値は18.5件(IQR:12.0~43.0)、患者数中央値は9万56例(2万109~17万14)であった。
高い強度のrまたはR2を示したのは17%
54件(14件[26%]は製薬企業による助成を受けた)のメタ解析では、代替マーカーと臨床アウトカムの109件の組み合わせについて報告していた。
このうち少なくとも1つの相関係数(
r)または決定係数(
R2)の報告が行われていたのは59件(54%)で、少なくとも1つの
rまたは
R2が高い強度(
r≧0.85または
R2≧0.72)に分類されていたのは10件(17%)であった。
これに対し、残りの50件(46%)では、傾き(slope)、効果推定値(effect estimate)、メタ回帰分析(meta-regression analysis)の結果のみを報告しており、このうち少なくとも1つの統計学的に有意な結果を示したのは26件(52%)だった。
著者は、「これらの知見は、FDAによる慢性疾患治療薬の承認に使用される可能性のある代替エンドポイントを支持するエビデンスの要約を、一般に公開することの重要性を強調するものである」としている。
(医学ライター 菅野 守)