イサツキシマブ+VRd、移植非適応多発性骨髄腫の1次治療に有効/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2024/06/17

 

 移植が非適応の多発性骨髄腫患者の1次治療において、標準治療であるボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメサゾン(VRd)と比較して抗CD38モノクローナル抗体イサツキシマブ+VRdは、60ヵ月の時点での無増悪生存(PFS)を有意に改善し、イサツキシマブを加えても新たな安全性シグナルの発現は観察されないことが、フランス・リール大学のThierry Facon氏らIMROZ Study Groupが実施した「IMROZ試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年6月3日号で報告された。

標準治療への上乗せ効果を評価する無作為化第III相試験

 IMROZ試験は、日本を含む21ヵ国93施設で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2017年12月~2019年3月に参加者を募集した(Sanofiなどの助成を受けた)。

 年齢18~80歳、新規に診断された未治療の多発性骨髄腫で、移植の適応がない患者446例を登録し、イサツキシマブ+VRd群に265例(年齢中央値72歳[範囲:60~80]、女性46.0%)、VRd単独群に181例(72歳[55~80]、48.1%)を登録した。イサツキシマブは、1サイクル目に10mg/kg体重を週1回、その後は同量を2週ごとに静脈内投与した。

 有効性の主要評価項目は、独立審査委員会の評価によるPFS(無作為化から病勢進行または死亡までのtime-to-event解析)とした。

CR以上の割合、CR達成例のMRD陰性も良好

 全患者の16.6%に高リスクの細胞遺伝学的特性を、37.0%に染色体異常として1q21+を認め、28.7%が推算糸球体濾過量(eGFR)<60mL/分/1.73m2であった。

 追跡期間中央値59.7ヵ月の時点における60ヵ月推定PFS率は、VRd単独群が45.2%であったのに対し、イサツキシマブ+VRd群は63.2%と有意に優れた(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.60、98.5%信頼区間[CI]:0.41~0.88、p<0.001)。

 全奏効(部分奏効以上)の割合は両群とも高かったが(イサツキシマブ+VRd群91.3% vs.VRd単独群92.3%)、完全奏効(CR)以上(CRまたは厳密なCR[stringent CR])の割合はイサツキシマブ+VRd群で有意に良好であった(74.7% vs.64.1%、p=0.01)。

 また、CR達成例における微小残存病変(MRD)陰性の割合は、イサツキシマブ+VRd群で有意に優れた(55.5% vs.40.9%、p=0.003)。全体のMRD陰性割合(58.1% vs.43.6%)および12ヵ月以上持続するMRD陰性割合(46.8% vs.24.3%)ともイサツキシマブ+VRd群で高かった。

OSは追跡を継続中

 60ヵ月時の推定全生存率(OS)は、イサツキシマブ+VRd群が72.3%、VRd単独群は66.3%であり(死亡のHR:0.78、99.97%CI:0.41~1.48)、CIの上限値が事前に規定された無益性の閾値(1.1)を超えており、現在も追跡を継続している。

 一方、イサツキシマブ+VRd群では、新たな安全性シグナルの発現を認めなかった。投与期間中に発現した重篤な有害事象(70.7% vs.67.4%)、および試験薬の投与中止の原因となった有害事象(22.8% vs.26.0%)の頻度は両群で同程度だった。

 著者は、「この第III相試験では、移植非適応の多発性骨髄腫の1次治療において、標準的なVRd療法に比べ、イサツキシマブ+VRdはPFSについて優れた有益性を示すとともに深い奏効をもたらした」とまとめ、「本試験では、高リスクの細胞遺伝学的特性を有する患者におけるイサツキシマブ+VRdによるPFSの改善は確認できなかったが、他の複数の試験でこれらの患者に対する1次治療および再発病変の治療におけるイサツキシマブをベースとする併用療法の有益性が観察されたことを踏まえ、さらなる解析と長期の追跡が正当化される」としている。

(医学ライター 菅野 守)