小児ケアの質はヘルスワーカーの訓練期間の長さで異なるか?

提供元:ケアネット

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公開日:2008/09/25

 

Integrated Management of Childhood Illness(IMCI)の訓練は、ヘルスワーカーの訓練の期間の長さやレベルにかかわらず、小児のケアにおいてほぼ同等の質をもたらすことが、中~低所得の4ヵ国における1次医療施設のデータ解析で判明した。小児死亡率の高い国は、質の高いヘルスワーカーが不足している傾向がある。一方、ヘルスワーカーのケアの質を評価した高度なエビデンスはほとんどないという。ペルー・サンマルコス国立大学のLuis Huicho氏が、Lancet誌2008年9月13日号で報告した。

訓練期間の異なるヘルスワーカーによるケアの質をIMCIガイドラインで評価




研究グループは、100ヵ国以上が導入しているIMCIの訓練を受けたヘルスワーカーの能力を個々のカテゴリー別(医師、看護師、看護助手、医療補助員など)に評価した。バングラデシュ(2003年)、ブラジル(2000年)、ウガンダ(2002年)、タンザニア(2000年)の1次医療施設から得られたデータについて解析を行った。

ヘルスワーカーの臨床能力を、訓練期間が長い群[中等教育終了後4年以上の訓練(ブラジル)あるいは3年以上の訓練(他の3ヵ国)]および短い群(それ以外の全ヘルスワーカー)で比較した。IMCIガイドラインに従い、ヘルスワーカーのケアの質を疾病に罹患した小児の評価、分類、管理の指標によって数値化した。全患児が、IMCIに基づく訓練を受けたヘルスワーカーとgold standardを体得したスーパーバイザーによる診査を受けた。

短期訓練ヘルスワーカーも十分な役割を果たしうる




対象となった小児はバングラデシュが272例、ブラジルが147例、タンザニアが231例、ウガンダが612例であった。ブラジルでは、長期訓練ヘルスワーカーによる管理を受けた患児が57.8%(43例)であったのに対し、短期訓練ヘルスワーカーによる管理を受けた患児は83.7%(61例)であり(p=0.008)、ウガンダではそれぞれ23.1%(47例)、32.6%(134例)であった(p=0.03)。

ブラジルでは、患児の評価と管理の能力は医師よりも看護師のほうが優れており、分類の正確さについても両者でほぼ同等であった。ウガンダでは、短期訓練群のほうが長期訓練群よりも管理能力が優れていたが、いずれの群も他国に比べ劣っていた。

バングラデシュでは、いずれの臨床業務の能力も両群でほぼ同等であった。タンザニアでは、長期訓練群は短期訓練群に比べ患児の総合評価の能力が有意に優れていた(p=0.004)。それ以外の臨床業務については、4ヵ国のヘルスワーカーの能力に有意な差は認めなかった。

著者は、「IMCIの訓練は、個々のカテゴリーのヘルスワーカーの訓練期間の長さやレベルにかかわらず、ほぼ同等の小児ケアの質をもたらした」と結論し、「医療サービスの不足している地域で短期の訓練しか受けていないヘルスワーカーも、IMCIの拡大戦略や他の小児死亡率の抑制策において十分な役割を果たす可能性がある」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)