ニルマトレルビル・リトナビル、曝露後予防の効果なし/NEJM

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2024/07/26

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の家庭内接触者を対象に、ニルマトレルビル・リトナビルの曝露後予防の有効性および安全性を検討した第II/III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、ニルマトレルビル・リトナビルの5日間または10日間投与はいずれも、症候性COVID-19発症リスクの有意な低下が認められなかった。米国・PfizerのJennifer Hammond氏らが報告した。COVID-19治療薬の臨床試験では、これまで曝露後予防の有効性は示されていなかった。NEJM誌2024年7月18日号掲載の報告。

COVID-19家庭内接触後96時間以内で無症状かつ迅速抗原検査陰性の成人が対象

 研究グループは、無作為化前96時間以内にCOVID-19患者と家庭内接触があり、無症状かつSARS-CoV-2迅速抗原検査陰性の成人を、ニルマトレルビル・リトナビル(ニルマトレルビル300mg、リトナビル100mg)の5日間投与群、10日間投与群、またはプラセボ群(5日間または10日間投与)に1対1対1の割合で無作為に割り付けた。

 主要エンドポイントは、ベースラインでRT-PCR検査が陰性であった参加者(解析対象集団)における、14日目までの症候性COVID-19の発症(RT-PCR検査または迅速抗原検査でSARS-CoV-2感染を確認)であった。

 2021年9月9日~2022年4月12日に、計2,736例が5日間投与群921例、10日間投与群917例、およびプラセボ群898例に無作為化された。

症候性COVID-19発症率にプラセボ群と有意差認められず

 投与14日目までのRT-PCR検査または迅速抗原検査でSARS-CoV-2感染が確認された症候性COVID-19の発症率は、5日間投与群2.6%(22/844例)、10日間投与群2.4%(20/830例)、プラセボ群3.9%(33/840例)であった。

 プラセボ群に対する相対リスクの減少は、5日間投与群で29.8%(95%信頼区間[CI]:-16.7~57.8、p=0.17)、10日間投与群で35.5%(-11.5~62.7、p=0.12)であり、統計学的な有意差は認められなかった。

 有害事象の発現率は、5日間投与群23.9%(218/912例)、10日間投与群23.3%(212/911例)、プラセボ群21.7%(195/898例)で、いずれも同程度であった。最も発現率が高かった有害事象は味覚障害で、それぞれ5.9%、6.8%、0.7%であった。

 なお著者は、ニルマトレルビル・リトナビルの独特の味による盲検化への影響、COVID-19患者に関する診断や治療に関する詳細なデータの不足、家庭内の他の家族の影響などを本研究の限界として挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

専門家はこう見る

コメンテーター : 谷 明博( たに あきひろ ) 氏

加納総合病院循環器内科

J-CLEAR会員

コメンテーター : 栗原 宏( くりはら ひろし ) 氏

霞ヶ浦医療センター 総合診療科