医療のIT化がもたらす効果:イギリス

提供元:ケアネット

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公開日:2008/09/26

 

イギリスではNIHの主導で医師オーダーエントリーシステムと放射線画像保存伝送システムの導入が進められており、ここ10年で推計20億ポンドがこの事業に投下されている。そのため、医療へのIT導入が医療の質の向上と、検査オーダーの減少など運営上の効率化をもたらしたかどうかが大きな関心事となっている。そこでブリストル大学のSimon Collin氏らのグループが通常診療で収集した患者レベル・データを用いて、システム導入前後の比較対照試験を行った。BMJ誌2008年8月14日号より。

医師入力オーダーシステムと画像システムの導入前後を比較




臨床上、運営上の有効性の尺度に基づいた、「情報技術に関するイギリスのプログラム」(NPfIT)の有効性を評価することを目的とする試験。

データ・ソースは急性期のNHS病院4施設の、2000~2005年にかけての入院患者と外来予約患者から得た。比較検証した導入システムは、医師による病理検査オーダーと結果閲覧のためのシステム(CPOE)、そして放射線検査画像を保管・表示・伝送するためのシステム(PACS)の2つ。

主要評価項目は、入院患者、外来患者数に対する検査オーダー数(全血球算定、尿培養、尿素、電解質、単純X線フィルム、CT、超音波の各種検査)とした。

検査オーダーが減少したものの一方で増加したものも




その結果、CPOEを導入した病院では外来患者の全血球算定(オッズ比0.25、95%信頼区間:0.16~0.40)、尿素と電解質(0.55、0.39~0.77)、尿培養(0.30、0.17~0.51)の検査オーダーの減少がもたらされていたが、次回外来で全血球算定は繰り返されてもいた(0.73、0.53~0.99)。入院患者では、尿素と電解質試験の実施数はほぼ4倍(3.63、1.66~7.94)に増加していた。

PACS導入病院では、外来患者の単純X線検査の重複が減少(0.62、0.44~0.88)し、入院患者ではCTが減少(0.83、0.70~0.98)していた。しかし一方で、外来患者ではCTの増加(1.89、1.26~2.84)、48時間以内入院患者でもCTオーダーが繰り返されていた(2.18、1.52~3.14)。

Collin氏は、CPOEとPACSはいずれも、検査の増加および減少双方を引き起こしているが、医療提供の効率化においてはこの変化の大きさがもつ可能性に着目することが重要であると述べ、ヘルスケア組織の至適管理を構築するためにも、ITがもたらす影響についてさらに十分な情報をインフォメーションする必要があると結論づけている。