米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のYifei Lu氏らは、中年期から高齢期にかけての血漿バイオマーカーの変化とすべての認知症との関連を、米国で行われた前向きコホート試験「Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)試験」の参加者データを用いて後ろ向き解析にて調べた。アルツハイマー病(AD)の神経病理、神経損傷、アストログリオーシスを示す血漿バイオマーカー値は加齢とともに上昇し、既知の認知症リスク因子と関連していた。また、AD特異的バイオマーカーと認知症の関連は中年期に始まり、高齢期のAD、神経損傷、アストログリオーシスの血漿バイオマーカー測定値は、すべてが認知症と関連していた。血漿バイオマーカーは、AD病理と神経変性に関する費用対効果の高い非侵襲的なスクリーニングになると大きな期待が寄せられているが、発症前に関しては十分に解明されておらず、多様な集団や生涯にわたる追加の調査が必要とされていた。JAMA誌オンライン版2024年7月28日号掲載の報告。
Aβ42/Aβ40比、p-tau181、GFAPを評価
研究グループは、ARIC試験の参加者1,525例について、参加者全員および地域で暮らすサブグループにおける、血漿バイオマーカーの経時的変化および、それらとすべての認知症との関連を後ろ向き解析にて評価した。
血漿バイオマーカーは、中年期(1993~95年、平均年齢58.3歳)と高齢期(2011~13年、平均年齢76.0歳、フォローアップ:2016~19年、平均年齢80.7歳)に採取された保存検体を用いて測定。中年期のリスク因子(高血圧、糖尿病、脂質、冠動脈性心疾患[CHD]、喫煙、身体活動)を評価し、それらと血漿バイオマーカーの経時的変化との関連を評価した。また、バイオマーカーとすべての認知症発症との関連を、2011~13年に認知症を発症しておらず1993~95年および2011~13年にバイオマーカー測定を受けたサブグループ(1,339例)で評価した。
血漿バイオマーカーは、アミロイドβ(Aβ)42/Aβ40比、phosphorylated tau at threonine 181(p-tau181)、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)を、Quanterix Simoaプラットフォームを用いて測定した。
すべての認知症の発症は、2012年1月1日~2019年12月31日の期間に、神経心理学的評価、半年ごとの参加者または情報提供者との接触および医療記録サーベイランスによって確認した。
中年期のAD特異的バイオマーカー、高齢期認知症と長期に関連
参加者1,525例(平均年齢58.3歳[SD 5.1])のうち、914例(59.9%)が女性、394例(25.8%)が黒人であった。総計252例(16.5%)が認知症を発症した。
中年期から高齢期にかけて、Aβ42/Aβ40比の減少、p-tau181、NfLおよびGFAPの上昇が観察された。これらバイオマーカーの変化は、アポリポタンパク質Eε4(
APOEε4)アレルを持つ参加者でより急速だった。
また、中年期から高齢期のバイオマーカーの変化率は、中年期に高血圧を有する参加者のほうが有さない参加者と比べてより大きかった(NfLの変化率の群間差:0.15 SD/10年など)。中年期に糖尿病を有する参加者は有さない参加者と比べて、NfL(変化率の群間差:0.11 SD/10年)、GFAP(同0.15 SD/10年)の変化が急速だった。
中年期ではAD特異的バイオマーカーのみが、高齢期認知症と長期にわたって関連していた(Aβ42/Aβ40比の1 SD低下当たりのハザード比[HR]:1.11[95%信頼区間[CI]:1.02~1.21]、p-tau181の1 SD上昇当たりのHR:1.15[95%CI:1.06~1.25])。
高齢期のすべての血漿バイオマーカーは、高齢期認知症と統計学的有意に関連しており、NfLとの関連が最も大きかった(HR:1.92、95%CI:1.72~2.14)。
(ケアネット)