好酸球性食道炎に対し、ベンラリズマブはプラセボと比較して組織学的寛解率が有意に高かったものの、嚥下障害の症状に関しては有意な改善は認められなかった。米国・シンシナティ大学のMarc E. Rothenberg氏らMESSINA Trial Investigatorsが、第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「MESSINA試験」の結果を報告した。ベンラリズマブは好酸球を減少させる抗インターロイキン-5受容体αモノクローナル抗体である。これまでの研究で、ベンラリズマブ治療により、血液、骨髄、肺、胃、食道組織における好酸球のほぼ完全な減少がもたらされ、ベンラリズマブが好酸球性食道炎の治療薬として有望である可能性が示されていたが、好酸球性食道炎患者におけるベンラリズマブの有効性と安全性は不明であった。NEJM誌2024年6月27日号掲載の報告。
組織学的寛解と嚥下障害症状の改善をベンラリズマブとプラセボで比較
MESSINA試験は2020年9月22日~2022年10月25日に、12ヵ国78施設で実施された。
研究グループは、症状を有し組織学的に活動性の好酸球性食道炎と診断された12~65歳の患者を、ベンラリズマブ(30mg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、盲検下で4週ごとに24週皮下投与した後、以降は全例に非盲検下でベンラリズマブ(30mg)を4週ごとに52週時まで皮下投与した。
主要有効性エンドポイントは2つで、24週時の組織学的寛解(高倍率1視野当たりの好酸球数が6個以下)、および嚥下障害症状質問票(DSQ)スコア(範囲:0~84、スコアが高いほど嚥下障害が高頻度または重度であることを示す)のベースラインからの平均変化量とした。
ベンラリズマブは組織学的寛解率を有意に改善、嚥下障害症状の改善に差はなし
計211例が、ベンラリズマブ群(104例)およびプラセボ群(107例)に割り付けられた。
24週時に組織学的寛解が認められた患者の割合は、ベンラリズマブ群87.4%、プラセボ群6.5%であり、ベンラリズマブ群で有意に高かった(群間差:80.8%、95%信頼区間[CI]:72.9~88.8、p<0.001)。
一方、DSQスコアのベースラインからの変化量は、ベンラリズマブ群-12.1、プラセボ群-15.1で、両群間に有意差は認められなかった(最小二乗平均の差:3.0、95%CI:-1.4~7.4、p=0.18)。
また、重要な副次エンドポイントである24週時における好酸球性食道炎内視鏡基準スコア(EREFS、範囲:0~9、スコアが高いほど内視鏡所見の異常が多い)のベースラインからの変化量は、ベンラリズマブ群-0.5、プラセボ群-0.4であり両群間に差はなかった。
有害事象の発現割合は、ベンラリズマブ群64.1%、プラセボ群61.7%で、有害事象のために試験を中止した患者はいなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)