未治療の非扁平上皮性の非良性原発不明がん(cancer of unknown primary:CUP)で、導入化学療法後に病勢コントロールが得られた患者においては、プラチナ製剤ベースの標準的な化学療法と比較して、分子腫瘍委員会による包括的ゲノム解析(comprehensive genomic profiling:CGP)に基づいて担当医が個別に選択した治療(molecularly guided therapy:MGT)は、無増悪生存期間(PFS)中央値が有意に延長し、客観的奏効率にも良好な傾向がみられることが、German Cancer Research Center(DKFZ)のAlwin Kramer氏らが実施した「CUPISCO試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年7月31日号で報告された。
34ヵ国の無作為化実薬対照第II相試験
CUPISCO試験は、日本を含む34ヵ国159施設で実施した非盲検無作為化実薬対照第II相試験であり、2018年7月~2022年12月に参加者を募集した(F. Hoffmann-La Rocheの助成を受けた)。
中央判定で病変(腺がん、低分化がん)が確認され、全身状態の指標であるECOG PSが0または1で、プラチナ製剤ベースの標準的な化学療法による1次治療(3サイクル)で病勢コントロール(完全奏効、部分奏効、安定)を達成した患者を対象とした。
被験者を、CGPに基づくMGTを受ける群、または1次治療と同じ化学療法レジメンを少なくとも3サイクル継続する群に、3対1の割合で無作為に割り付けた。
主要評価項目は、ITT集団における担当医判定によるPFS(無作為化の日から病勢進行または全死因死亡のいずれか早い日まで)とした。
PFS:MGT群6.1ヵ月vs.化学療法群4.4ヵ月
636例を登録した。追跡期間中央値は24.1ヵ月であった。導入化学療法で病勢コントロールを達成した438例のうち436例を無作為化の対象とし、MGT群に326例(年齢中央値61.0歳[四分位範囲[IQR]:53.0~70.0]、男性51%)、化学療法群に110例(62.5歳[55.0~69.0]、52%)を割り付けた。
PFS中央値は、化学療法群が4.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.1~5.6)であったのに対し、MGT群は6.1ヵ月(4.7~6.5)と有意に優れた(ハザード比[HR]:0.72、95%CI:0.56~0.92、p=0.0079)。
全生存期間(OS)の中間解析では、OS中央値はMGT群が14.7ヵ月(95%CI:13.3~17.3)、化学療法群は11.0ヵ月(9.7~15.4)だった。
客観的奏効率は、MGT群が18%(95%CI:13.8~22.4)、化学療法群は8%(3.81~15.0)(群間差:9.6%、95%CI:2.4~16.8)であり、奏効期間や病勢コントロール率には差を認めなかった。
OSのより長期の追跡が必要
MGT群は、治療中止に至った重篤な有害事象(100人年当たりの発生率:9.2 vs.3.8)と致死的なアウトカムに至った有害事象(5.1 vs.0)を除き、他のすべての有害事象のカテゴリーにおいて化学療法群に比べて発生率が低いか、同程度であった。
著者は、「これらの結果に基づき、非良性CUP患者の初回診断時にはCGPを実施することを推奨する。CGPのための組織生検およびリキッドバイオプシーは、より適切な治療の選択を可能にし、これらの患者におけるpractice-changingな戦略となる可能性があり、今後の発展が期待される」と述べ、「ベネフィット-リスクのプロファイルの評価をさらに進めるためには、OSについてより長期間の追跡調査が必要である」とまとめている。
(医学ライター 菅野 守)