オーストリア・ウィーン医科大学のClaudia Zimmermann氏らは、医師の自殺による死亡を一般集団と比較した研究について、システマティックレビューおよびメタ解析を行い、男性医師と女性医師の年齢調整自殺率比は時間の経過と共に減少したが、女性医師では高い水準のままであったことを報告した。著者は、「メタ解析に組み込まれた研究は主に欧州、米国、オーストラリア・ニュージーランドで行われたもので、これら以外の地域での研究が乏しいという限界はあるが、今回の結果は、とくに女性医師および高リスク群における、自殺による医師死亡の研究と予防について継続的な努力が求められることを示唆している」とまとめている。BMJ誌2024年8月21日号掲載の報告。
1960年から2024年3月31日までに発表された研究をレビュー
研究グループは、Embase、Medline、PsycINFOを用い、1960年から2024年3月31日までに発表された研究を、言語を問わず検索した。
研究の適格基準は、医師の自殺による死亡の直接法または間接法による年齢調整死亡率比、医師および一般集団に類似した参照集団の10万人年当たりの自殺率、または自殺による医師死亡に関する死亡率比の計算に適した抽出可能なデータがある観察研究とした。選択された研究については引用および被引用文献のスクリーニングを行った。
2人の独立した評価者がデータを抽出し、有病率研究のためのJoanna Briggs Instituteチェックリスト改変版を用いてバイアスリスクを評価した。
男性医師と女性医師の平均効果推定値をランダム効果モデルに基づき算出し、地理的地域によるサブグループ解析および他の専門職との比較による医師の自殺による死亡の2次解析を行った。
年齢調整自殺率比は男性医師1.05、女性医師1.76
最初の文献検索で得られた2万3,458件の研究から、重複の削除、タイトルと抄録のスクリーニングにより786件を選出し、このうち75件が適格基準を満たした。さらに、引用文献とレジストリの検索により、適格基準を満たした22件の研究が特定された。全文スクリーニングの結果、男性医師については38件、女性医師については26件の研究が解析対象となり、それぞれ42および27のデータセットをメタ解析に用いた。
男性医師の自殺は計3,303件、女性医師の自殺は合計587件であった(観察期間はそれぞれ1935~2020年、1960~2020年)。メタ解析の結果、自殺による死亡の平均効果推定値は男性医師で1.05(95%信頼区間[CI]:0.90~1.22)、女性医師で1.76(1.40~2.21)であり、女性医師は一般集団と比べて有意に高かった。
異質性はいずれの解析でも高く、メタ回帰分析の結果、研究観察期間の中間点が有意に影響しており、時間の経過と共に効果量は減少していることが示された。
他の専門職と比較した場合、男性医師の自殺による死亡の平均効果推定値は1.81(95%CI:1.55~2.12)であった。女性医師に関しては、適格研究が少なくランダム効果メタ解析は実施できなかった。
(ケアネット)