β遮断薬長期服用MI既往患者、服薬の中断vs.継続/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2024/09/20

 

 心筋梗塞既往の患者において、長期β遮断薬治療の中断は継続に対して非劣性が認められなかったことを、フランス・ソルボンヌ大学のJohanne Silvain氏らABYSS Investigators of the ACTION Study Groupが、「Assessment of BetaBlocker Interruption 1 Year after an Uncomplicated Myocardial Infarction on Safety and Symptomatic Cardiac Events Requiring Hospitalization trial:ABYSS試験」の結果、報告した。心筋梗塞後のβ遮断薬による治療については、適切な投与期間は不明である。合併症のない心筋梗塞既往患者において、副作用を軽減しQOLを改善するために、長期β遮断薬治療を中断することの有効性と安全性に関するデータが求められていた。NEJM誌オンライン版2024年8月30日号掲載の報告。

約3,700例を、β遮断薬中断群と継続群に無作為化

 ABYSS試験は、フランスの49施設で実施されたPROBE(Prospective Randomized Open-label Blinded End-Point)デザインの多施設共同非劣性試験である。

 研究グループは、2018年8月28日~2022年9月12日、登録6ヵ月以上前に心筋梗塞既往でβ遮断薬の投与を受けており、左室駆出率が40%以上、過去6ヵ月以内の心血管イベントがない患者を、β遮断薬中断群または継続群に1対1の割合で無作為に割り付け、6ヵ月後、12ヵ月後、以降は最後の登録患者が1年以上の追跡を完了するまで毎年評価した。

 主要エンドポイントは、死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中または心血管疾患による入院の複合で、非劣性マージンはイベント発生率の群間差(中断群-継続群)の両側95%信頼区間(CI)の上限が3%ポイントとした。主な副次エンドポイントは、6ヵ月時および12ヵ月時のEuropean Quality of Life-5 Dimensions(EQ-5D)質問票スコアのベースラインからの変化量とした。

 計3,698例が無作為化され、1,846例が中断群、1,852例が継続群に割り付けられた。平均(±SD)年齢は63.5±11歳、17.2%が女性で、心筋梗塞発症から無作為化までの期間中央値は2.9年(四分位範囲[IQR]:1.2~6.4)であった。

主要複合エンドポイント、中断群の非劣性は確認されず

 追跡期間中央値3.0年(IQR:2.0~4.0)において、主要エンドポイントの複合イベントは、中断群で23.8%(432/1812例)、継続群で21.1%(384/1821例)に発生した。群間差は2.8%ポイント(95%信頼区間[CI]:<0.1~5.5)、ハザード比は1.16(95%CI:1.01~1.33、非劣性のp=0.44)であり、中断群の継続群に対する非劣性は認められなかった。

 最終追跡調査時におけるEQ-5Dスコアのベースラインからの変化量(平均±SD)は、中断群0.033±0.150、継続群で0.032±0.164であり(群間差:0.002、95%CI:-0.008~0.012)、中断によるQOLの改善は示されなかった。

 なお、著者は研究の限界として、非盲検試験であること、1ヵ国のみで実施されたこと、潜在的なバイアスの可能性がある心血管イベントによる入院が主要エンドポイントに含まれていることなどを挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)