左室駆出率(LVEF)が保たれている(≧50%)急性心筋梗塞患者では、長期のβ遮断薬投与は投与しなかった場合と比較して、全死因死亡と新たな心筋梗塞の発生の複合主要エンドポイントを改善せず、安全性のエンドポイントには差がないことが、スウェーデン・ルンド大学のTroels Yndigegn氏らが実施した「REDUCE-AMI試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2024年4月7日号で報告された。
3ヵ国の無作為化試験
REDUCE-AMI試験は、3ヵ国(スウェーデン、エストニア、ニュージーランド)の45施設で実施したレジストリーベースの前向き非盲検無作為化並行群間比較試験であり、2017年9月~2023年5月に患者を登録した(Swedish Research Councilなどの助成を受けた)。
冠動脈造影と心エコー図検査を受けたLVEF 50%以上の急性心筋梗塞の成人患者5,020例(スウェーデン人95.4%)を登録し、β遮断薬(メトプロロールまたはビソプロロール)の長期経口投与を受ける群に2,508例、β遮断薬の投与を受けない群に2,512例を割り付けた。
主要エンドポイントは、全死因死亡と新規の心筋梗塞の複合とした。
全死因死亡、心筋梗塞の個別の発生にも差がない
全体のベースラインの年齢中央値は65歳、女性が22.5%で、ST上昇型心筋梗塞が35.2%であった。リスク因子としては、46.2%で高血圧、14.0%で糖尿病、7.1%で心筋梗塞の既往歴、0.7%で心不全の既往歴を認めた。入院時に11.6%がβ遮断薬の投与を受けていた。
追跡期間中央値3.5年(四分位範囲[IQR]:2.2~4.7)の時点で、主要エンドポイントは投与群の2,508例中199例(7.9%、年間イベント発生率2.4%)、非投与群の2,512例中208例(8.3%、2.5%)で発生し、両群間に有意な差はなかった(ハザード比[HR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.79~1.16、p=0.64)。
また、投与群では副次エンドポイントの改善も得られなかった(全死因死亡[投与群3.9%、非投与群4.1%]、心血管死[1.5%、1.3%]、心筋梗塞[4.5%、4.7%]、心房細動による入院[1.1%、1.4%]、心不全による入院[0.8%、0.9%])。
喘息/COPDによる入院、脳卒中による入院も同程度
安全性のエンドポイント(徐脈性不整脈による入院、第2度または第3度房室ブロック、低血圧、失神、ペースメーカー植込み)は、投与群で3.4%、非投与群で3.2%に発生した。また、喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)による入院はそれぞれ0.6%、0.6%、脳卒中による入院は1.4%、1.8%にみられた。
著者は、「これらの知見は、いくつかの大規模な観察研究やそれらの研究のメタ解析の結果とも一致する」と述べ、「本試験で使用したβ遮断薬は先行研究に比べ低用量であったが、現在のβ遮断薬治療の実情を反映するものである」とまとめている。
(医学ライター 菅野 守)